2023 Fiscal Year Research-status Report
予後不良Ewing肉腫における分子マーカーの同定および新規治療標的の探索
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22K16783
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
小倉 浩一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (20583115)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Ewing肉腫 / 遺伝子変異 / バイオマーカー / 治療標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ewing肉腫においては、EWSR1遺伝子、ETSファミリー転写因子群との間に融合が必発であり、染色体転座による異常転写因子産生が腫瘍発生に中心的な役割を担う。特にEWS-FLI1融合遺伝子、EWS-ERG融合遺伝子はEwing肉腫の非常に強いドライバー遺伝子として知られており、その他の二次変異は極めてまれであるといわれている。申請者らは米国のデータであるMSK-IMPACTに登録された113例のEwing肉腫のクリニカルシークエンスのデータを解析し、ETS domain transcriptional repressorをコードするERF変異(7%)、FGFR1変異(2.7%)など新規の遺伝子変異を同定し、これらが予後不良と相関していること、in vitroの解析でERFを過剰発現した場合は逆に細胞増殖やコロニー形成が減少することを明らかにし、ERFの機能喪失がEwing肉腫のよりaggressiveな表現型に関与することを報告した。さらに、Ewing肉腫の人種間の変異プロファイルの相違を比較するために、日本人の検体を集積し、全例について病理診断の再確認を行い、40例の適格症例を同定後、遺伝子解析に向けた核酸抽出(DNAおよびRNA)を行った。現在、遺伝子解析のためのライブラリを作成中である。また、クリニカルシークエンスから見た日本人におけるEwing肉腫の変異プロファイルを同定するために、公開されている臨床およびゲノムのビッグデータだるC-CATデータベースを用いてEwing肉腫の症例を抽出し、解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初期に新型コロナ感染症の蔓延があったこともあり、検体収集がやや遅れていたが、検体収集を完了し、核酸抽出まで行った。
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Strategy for Future Research Activity |
日本人におけるEwing肉腫の変異プロファイルを同定するために二つの異なるアプローチを用いており、C-CATデータベースに登録されているEwing肉腫の解析が終了したため、これを来年度には論文として公表する予定である。また、収集した検体の解析も今年度中に早急に行い、先に報告した米国の変異プロファイルとの比較を行う予定である。 最終的には1) 同定された予後不良に関与する可能性のある二次変異に関しては、同変異を有する細胞株におけるin vitroの解析を通して、治療標的の同定を行い、予後不良なサブセットであるEwing肉腫の有効な新規治療開発への応用へとつながる成果を発表すること、2) ゲノム異常をLiquidバイオプシーに応用し術前化学療法の効果予測、再発予測などのバイオマーカーとして利用すること、を目指したいと考えている。
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Causes of Carryover |
公的に公開されているデータの解析等、資金のかからない解析を中心に行ったこと、検体集積の進捗がやや遅れていることもあり、必要以上に経費をかけずに済んだ。 次年度の経費のかさむ解析等に使用する計画である。
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