2022 Fiscal Year Research-status Report
膀胱での尿再吸収機構と夜尿症の病態解明を目指した基礎研究
Project/Area Number |
22K16793
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
森澤 洋介 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50623683)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 膀胱 / 尿再吸収 / 夜尿症 / Vibegron |
Outline of Annual Research Achievements |
膀胱での尿再吸収を制御できる薬剤を創出し、夜尿症治療に役立てることが最終目標にした研究である。睡眠と夜間尿禁制を維持する機構の一つとして「膀胱での尿再吸収」を扱う基礎研究は、ほとんどない。夜尿症は膀胱容量の未熟さ、覚醒障害、夜間多尿の3つの要因が複合的に関連している病態であると理解されているが、夜尿症の病態は複合的な要因が重なっており、明確な病態解明には至っていない。夜尿症に関する基礎研究は少なく、すでに治療薬として使用されている抗利尿ホルモンとの関連性を検討した報告が多い。膀胱での尿再吸収が夜尿症に関わっているという発想は今までになく、夜尿症の病態解明につながる可能性がある。従来から分類される膀胱型、夜間多尿型といった分類を行うことは夜尿症の複雑な病態を考量すると難解ではあるが、再吸収不良型というタイプが存在している可能性はある。 われわれはラットを用いた研究で膀胱尿路上皮のAquqporin-2を介した膀胱での水吸収の可能性を報告しており、夜尿症の病態にこの再吸収機構の未熟性が関与しているのではないかと考えている。また本邦では、過活動膀胱の新規治療薬としてβ3作動薬Vibegronが認可され、過活動膀胱のみではなく、夜間頻尿への有用性と安全性が確認され、小児患者を対象とした夜尿症への治療効果が報告されている。抗コリン薬使用で難治性であった患者への治療効果も報告されており、Vibegronは夜尿症に対する機能的膀胱容量の増大以外の治療効果を有している可能性がある。抗コリン薬、Vibegronをラットに投与し、機能的膀胱容量が大きくなったラットと正常ラットを比較し、膀胱での尿再吸収と膀胱容量との関連性を明らかにする。Vibegronが膀胱での尿再吸収機構に寄与しているのであれば、夜尿症の病態解明および膀胱での尿再吸収機能の解明につながる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Vibegron投与ラットと正常ラットと比較して水再吸収量を比較したが、両群間で変化を認めなかった。これにはいくつかの原因が考えられ、正常ラットにVibegronを投与したのみでは機能的膀胱容量に与える影響が極めて少なかったのではないかと考えられる。われわれはヒトを対象にした臨床研究で就寝中に膀胱が尿を吸収して機能的膀胱容量あたりの膀胱内尿量を維持することを報告しており、夜尿症のモデル動物が存在しないものの、機能的膀胱容量が減少する過活動膀胱のモデルラットを使用することで機能的膀胱容量と膀胱内尿再吸収の関連を評価することが可能ではないか考えた。現在過活動膀胱のモデルとして複数の動物モデルが存在するが、その候補の一つである高血圧モデルラット(SHR/Izm、日本SLC株式会社)を用いた検証を開始している。機能的膀胱容量が減少していることが予想されるSHRラットにVibegronを投与して、膀胱内での水吸収の変化を検討する予定である。膀胱での尿再吸収機構は腎尿細管で行われているような劇的な変化が行われているわけではなく、機能的膀胱容量を維持させる持続するわずかな変化が行われていると考えられる。膀胱での尿再吸収のわずかな変化を正常ラットを用いた研究で明らかにすることが難しく、実験動物の変更を行った検証を開始しているところであるため実験計画が遅れている状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、実験を開始している高血圧モデルラット(SHR/Izm、日本SLC株式会社)を実験を進めていく予定である。Vibegron投与SHRラットと正常SHRラットを比較して、機能的膀胱容量の変化や膀胱内水吸収量の変化を評価し、Vibegronによる膀胱での尿再吸収機構への関与とと夜尿症の病態解明をすすめていく予定である。
|
Causes of Carryover |
実験結果より使用する動物モデルの変更の必要性を検討した。高血圧モデルラット(SHR)を用いた実験を開始するに際して、文献的な実験計画の見直し等を行し、主とした実験を次年度を延期することとなったため、使用額の変更が必要であった。
|