2022 Fiscal Year Research-status Report
腎癌薬剤耐性獲得におけるBCL2A1の機能解析と新規治療戦略の開発
Project/Area Number |
22K16813
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
八木 真由 山形大学, 医学部, 助教 (50571676)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腎癌 / アポトーシス / BCL2A1 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎癌は、細胞傷害性抗癌剤や放射線治療に対して抵抗性である。現在、開発・承認されている分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤においても、多くの患者で初期耐性や獲得耐性がみられる。本研究では、内因性アポトーシスを調整するBCL2ファミリータンパクのうち、抗アポトーシス作用のBCL2A1が腎癌のアポトーシス回避機構に関与すると仮定し、その作用の解析と阻害効果について検討した。 腎癌細胞株(786-O、A-498、769-P)を用いてBCL2ファミリータンパクの発現をウエスタンブロット法で確認すると、786-OはBCL2A1高発現株、769-P、A-498は低発現株であり、786-Oに対して、siRNA法を用いてBCL2A1をノックダウンすると、有意な細胞生存率の低下を示した。また、BCL2A1ノックダウンによるBCL2ファミリータンパクの変化を確認すると、アポトーシス促進性に働くBAK、BIM、BAD、BID、NOXAの発現が上昇する一方で、アポトーシス抑制性に働くMCL-1、BCL-2の発現が上昇していた。このことから、アポトーシス抑制性に働くタンパクのうち、MCL-1やBCL-2よりもBCL2A1の方が細胞生存に重要な役割を持っていることが示唆された。 さらに、BCL2A1阻害効果を確認するため、汎BCL2阻害剤であるsabutoclax(BCL2A1、BCL2、BCLxLおよびMCL-1阻害)とAT101(BCL2、BCLxLおよびMCL-1阻害)をそれぞれの細胞株に添加すると、いずれの細胞株でもAT101よりsabutoclaxのIC50が著明に低濃度であり、BCL2A1阻害作用の重要性が確認された。また、BCL2A1高発現である786-Oではsabutoclaxの濃度依存性に細胞生存率が低下したが、769-P、A-498では、高濃度にしても一定以上の効果が得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学位取得が2023年3月に変更となったことと、コロナ禍による研究物品や研究試薬の納入の遅れによる研究自体の進行遅延が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
① BCL2A1の薬剤感受性予測マーカーとしての有用性の検討するため、手術で摘出した腎癌組織標本を用いて、BCL2A1の発現を免疫組織化学的染色により評価し、臨床的因子との関連を解析する。 ②sabutoclaxによるアポトーシスの誘導の確認をcaspase3/7発現とミトコンドリア膜電位変化の観察で評価、アポトーシス細胞の割合をフローサイトメトリー法で評価する。 ③マルチキナーゼ阻害剤ソラフェニブ、カボザンチニブ、レンバチニブ、5FU阻害剤、mTOR阻害剤ラパマイシンとsabutoclaxの併用効果をin vitroで検討する。 ④腎癌細胞株皮下移植マウスに対し、sabutoclaxの投与、効果を検討する。
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Causes of Carryover |
学位取得が2023年3月に遅延したため、研究費開始が2023年3月31日となり、実質2022年度の使用申請ができなかったため。
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