2023 Fiscal Year Research-status Report
妊娠高血圧腎症の発症における胎盤(プロ)レニン受容体関連機序の解明
Project/Area Number |
22K16842
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
木田 可奈子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20464852)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 妊娠高血圧腎症 / 妊娠高血圧腎症ラットモデル(RUPPラット) / (P)RR / ACE / ACE2 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、妊娠14日目のSDラットにおいて、総腸骨動脈分岐部直上および両側子宮動静脈へのクリッピング術を行い、子宮灌流圧低下(Reduced Uterine Perfusion Pressure:RUPP)を誘発させ、妊娠高血圧腎症ラットモデルを作製した(RUPP群)。妊娠21日目に胎仔・胎盤を摘出し、重量を測定した。重量測定の結果、RUPP群の胎盤重量はSham群と比較して軽いことが示された。胎仔の重量も同様にSham群と比較して、RUPP群は低値であった。さらに、胎盤は組織学的解析[HE染色、マッソン・トリクローム染色、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察]を行った結果、RUPP群の胎盤で胎盤絨毛間質の線維化と血管内皮障害が見られた。血管内皮障害は血管内皮障害そのものが血管内皮障害を引き起こし、高血圧や動脈硬化の進展に寄与することが明らかになっていることから、令和5年度は、このモデルで血圧測定、血圧調節(レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系)の重要酵素であるACE・ACE2の循環血液中および胎盤内の活性および定量を行った。その結果、RUPP群はSham群と比較して、循環血液中ではACE2量および活性が減少していた。胎盤内ではACE・ACE2共に量および活性が減少していた。これまでの結果から、RUPPが引き起こす血管内皮障害は胎盤内の障害だけでなく、全身の血圧調節にも影響を及ぼしていることが示唆された。RUPPによって発現が増加したレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の上流にある可溶性(プロ)レニン受容体[s(P)RR]とACE・ACE2の関与も現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物モデルは現在実験を継続し、血圧変動データを集積中である。当初計画通り実験は進行し、良い結果が出ている。ここまでの状況から、進行具合としてはおおむね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)非妊娠時、通常妊娠時、RUPP妊娠時の血圧変動比較と尿蛋白量の比較。 妊娠高血圧腎症の研究では、血圧変動解析と尿蛋白量解析は非常に重要な実験である。これまでのモデルでは留置したクリップの位置に問題があり血圧測定が困難であったが、クリップの位置を変更したことにより血圧の測定が可能となった。結果も良好である。RUPPによって発現が増加したレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の上流にある可溶性(プロ)レニン受容体[s(P)RR]とACE・ACE2の関与も引き続き検討する。 (2)RUPPラットの血中および胎盤組織中の sFlt-1(soluble fms-like tyrosine kinase 1) sENG(soluble Endoglin )発現量解析。 ヒト妊娠高血圧腎症発症胎盤では、らせん動脈のリモデリング不全が胎盤絨毛間質の低酸素を惹起し、絨毛細胞でのsFlt-1およびsENGの産生増加が、PlGF(Placental growth factor)やVEGF(Vascular endothelial growth factor)を低下させ胎盤血管新生を抑制させる。RUPPラットにおいても、同様の事が起こっているかを解析することが重要である。
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Causes of Carryover |
経費の未使用分の繰り越しのため. 次年度も同動物モデルの作成・解析,および研究者が国際会議や学会に参加し研究成果を発表するための旅費や参加費用などに使用する予定である.
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