2022 Fiscal Year Research-status Report
妊娠高血圧症候群による児の神経学的後障害の病態解明と先制医療への戦略
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22K16857
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
牛田 貴文 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90805152)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 妊娠高血圧症候群 / DOHaD / 早産児 / 脳障害 / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では以下の3点を目指している。(1)妊娠高血圧症候群を発症した母から生まれた児における神経学的後障害のメカニズム解明、(2)新生児合併症予測プログラムに基づく、Webツールの作成および公開、(3)新生児先進的頭部MRI画像解析を用いた神経学的ハイリスク児抽出アルゴリズムの開発を目指している。 (1)については、妊娠高血圧症候群モデル動物を用いて神経学的後障害の解析を行うため、sFlt-1アデノ随伴ウィルスベクター投与による動物モデルの作成を行っているが、今年度ではモデル作成には至っていない。 (2)については、新生児臨床研究ネットワークのデータベースを用いて、児の神経学的予後(短期および長期)を予測するプログラムを作成したが、より日常臨床で使用しやすいようにWebツールを2023年2月名古屋大学産婦人科学教室のHP上に公開した(https://www.med.nagoya-u.ac.jp/obgy/research/obstetrics/prediction_index.html)。今後は各周産期施設においてこのプログラムの周知、普及を目指す。 (3)に関しては、妊娠高血圧症候群や絨毛膜羊膜炎などの妊娠合併症が児の脳神経系にどのような変化を生じるか画像解析を用いて知見を集積している。今年度では、組織学的絨毛膜羊膜炎による児の脳皮質下灰白質における各領域での容積変化を、セグメンテーションツールであるInfant FreeSurferを用いて解析し、両側淡蒼球および側坐核が有意に減少することが明らかになった。今後は解析結果を検証した後、国際誌への投稿に向けて準備を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)妊娠高血圧症候群を発症した母から生まれた児における神経学的後障害のメカニズム解明については、sFlt-1アデノ随伴ウィルスベクター投与による動物モデルの作成を行っているが、モデル作成に難渋している。ベクター作成は完了したが、マウスに投与しても十分な血中濃度を得られず、現在投与量の調整やベクターの変更を行っている。 (2)新生児合併症予測プログラムに基づく、Webツールの作成および公開については、2023年2月名古屋大学産婦人科学教室のHP上に公開できた。 (3)新生児先進的頭部MRI画像解析を用いた神経学的ハイリスク児抽出アルゴリズムの開発については、組織学的絨毛膜羊膜炎による児の脳皮質下灰白質における脳容積変化に関する知見を得られ、現在国際誌へ投稿準備中である。上記状況により、進行具合としてはおおむね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)妊娠高血圧症候群を発症した母から生まれた児における神経学的後障害のメカニズム解明については、sFlt-1ウィルスベクターの投与量の調整やベクター作成方法の変更を行っている。万が一モデル作成が困難な場合に備えて、アンギオテンシンII投与による妊娠高血圧症候群モデルマウスを並行して作成し、仔の神経学的後障害を評価する。 (2)新生児合併症予測プログラムに基づくWebツールについては、2023年2月に公開が完了したため、今後は各周産期施設においてこのプログラムの周知、普及を目指す。 (3)新生児先進的頭部MRI画像解析を用いた神経学的ハイリスク児抽出アルゴリズムの開発については、得られた知見について国際誌へ投稿を行うと共に、他の疾患や薬剤における児の脳発達への影響や神経学的予後について検討を行う。
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Causes of Carryover |
2022年度はsFlt-1アデノ随伴ウィルスベクター投与による妊娠高血圧症候群モデルの作成に難渋し、ベクターをマウスに投与して仔の神経学的後障害を十分に評価できなかったため、次年度使用額が生じた。2023年度にはアンギオテンシンIIを用いた動物モデルを平行して作成する予定であり、2023年度に繰り越した助成金と2023年度分として請求した助成金を用いて、2つの動物モデルを作成する。
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Research Products
(2 results)