2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K16883
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
杉本 澄美玲 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30645867)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高異型度漿液性癌 / p53 signature / STIC |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮性卵巣癌は1型と2型に分類され、1型には子宮内膜症を前癌病態とする明細胞癌が含まれる。2型は高異型度漿液性癌(High-grade serous carcinoma:HGSC)であり、p53やBRCA1/2がドライバー遺伝子と考えられ、正常卵管采上皮から分泌細胞の伸長(secretory cell outgrowth:SCOUT)、p53 signature、Dormant serous tubal intraepithelial carcinoma (STIC)、Active STICを経てHGSCに至るまで、段階的な遺伝子変化の蓄積によって発生すると考えられている。CD44v9は、細胞膜のシスチン・グルタミン酸トランスポーターを安定化し、細胞内へのシスチンの取込みを増加させ抗酸化物質グルタチオンの生成を促進し、活性酸素種に対する抵抗性を高める。先行研究では、卵管采の前癌病変では、p53変異に続いて起こるCD44v9発現低下によって活性酵素腫への抵抗力が弱まり、上皮内癌への進展に寄与する。 今回、HGSCの各段階の卵管采前癌病変における酸化ストレスの程度を酸化ストレスのマーカーで測定し、CD44v9の発現低下後の酸化ストレスの程度と、癌の進展、進行期、血清学的、予後などの臨床因子とを比較検討した。まず、患者30名の癌組織および卵管采組織の計60検体を対象とし形態学的特徴とp53およびCD44v9の蛋白発現、Ki-67の発現を判定し、免疫組織化学的に卵管采病変を分類した。それらをHO-1および8OHdGの酸化ストレスマーカーで免疫染色し、染色強度をスコア化し評価した。統計解析の結果、卵管采の前癌病変では、CD44v9の発現低下の後、酸化ストレスの強度が癌の進行期に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
過去の病理組織のパラフィン包埋ブロックでは、古いものでは抽出DNAや免疫染色の質が落ちるため、卵管采病変を有する卵巣癌症例の蓄積にやや難渋しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、卵巣の髙異型度漿液性癌における卵管采の前癌病変について、CD44v9発現低下と、その後の酸化ストレスの強度によって発癌が加速することが示された。今後、酸化ストレスに晒された後、癌細胞のどの遺伝子変異ないし遺伝子発現が起こりp53mutationを引き起こすか、解明していく。また、臨床データを解析し、年齢因子ないし引き金となる変異からの時間経過が関与しているか調べる。
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Causes of Carryover |
試薬の購入および解析を外部委託するための費用として使用する
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