2023 Fiscal Year Research-status Report
モデル動物による好酸球性中耳炎の難治化と内耳障害の研究
Project/Area Number |
22K16892
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
工藤 直美 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (30770143)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 好酸球性中耳炎 / 上皮性サイトカイン / 樹状細胞 / 自然免疫 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は卵白アルブミンを用いてモデル動物を作成していたが、本研究においてはプロテアーゼ投与による局所刺激を行うことによるモデル動物の作成を目指した。これは獲得免疫によるモデル作成ではなく、自然免疫系のメカニズムによるモデル作成を行うことになる。近年種々のプロテアーゼによる粘膜障害がアレルギー疾患の発症に関与することが明らかとなっており、好酸球性中耳炎においても経耳管的なプロテアーゼの侵入が発症に関与している可能性が示唆されている。本研究においては植物性のプロテアーゼであるパパインを用いてモデル動物を作成し、中耳粘膜における杯細胞過形成の亢進や好酸球性ムチンの存在を確認できた。粘膜上皮においてはIL-33、IL-25など上皮性サイトカインや杯細胞におけるMUC5Bを発現する細胞が有意に増加していることを確認している。さらに蛍光免疫染色により自然リンパ球2型(ILC2)の存在も明らかにした。以上のことからプロテアーゼ刺激により自然免疫系の反応が惹起されるという、より生理的な状態に近い好酸球性中耳炎のモデル動物の作成に成功したと言える。これらの結果をまとめ、国内の学会で報告を行っており、現在論文投稿のために執筆作業中である。 本研究の一環として好酸球性副鼻腔炎とその疑い例に対して、鼻粘膜における好酸球数とMajor Basic Protein (MBP)の関係についても調査している。この研究では好酸球数が少ない患者においてもMBPの発現が観察されることから、過去に好酸球性炎症が存在していた可能性があることが示唆された。この結果については英文誌に論文として投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では好酸球性中耳炎難治化の病態解明を目指しており、予後不良因子の可能性があるM2マクロファージの解析、特に臨床例との関連を調査したいと考えているが、モデル動物の作成に時間がかかり、そこまでの解析はできていない。また、モデル作成の方法を簡素化することでマウスモデルを作成しようと考えているが、それについては今回確立した方法を用いてこれから取り組むべき課題であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回作成に成功したモデル動物を用いてマクロファージの存在、分布について検討するつもりである。モデル動物の標本数を確保できつつあるため、間もなく検討を開始できるものと考えている。また、モデル動物作成の方法論もまとまったので、今年度はマウスモデルの作成および解析を開始することができると考えている。
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Causes of Carryover |
2023年度は論文投稿がなかったこと、学会発表も少なかったことから研究費の使用が少なかった。2024年度はこれまでの研究成果を学会で報告すること、国際学会への参加も計画していること、また論文投稿を準備しており、研究費を使用する予定である。
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