2023 Fiscal Year Research-status Report
I-131抵抗性の克服による甲状腺癌に対する新規分子標的薬併用放射線療法の開発
Project/Area Number |
22K16921
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 健介 関西医科大学, 医学部, 准教授 (80533182)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 甲状腺癌 / NIS / レンバチニブ / I-131 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞内へのヨウ素取り込みに重要な役割を果たすナトリウムヨウ素共輸送体(sodium / iodine symporter: NIS)に注目し、NISの発現・機能を促進する分子標的薬、レンバチニブ、I-131との3者併用による抗腫瘍効果について検討することにより、I-131治療抵抗性の難治性甲状腺癌に対する新たな分子標的薬併用I-131内用療法の確立を目指す。我々は甲状腺癌細胞K1, K1-NIS(K1細胞にNISを強発現させた細胞)を用いたコロニー形成アッセイにより、特にK1-NISにおいてI-131とレンバチニブの併用療法によって強い細胞増殖抑制効果が得られることを明らかにした。またK1-NISを皮下に移植した担癌マウスを用いた治療実験において、I-131とレンバチニブの併用により高い抗腫瘍効果が得られた。さらに、NISの発現度が異なるいくつかの細胞を用いたin vitro実験において、NISの発現の状態によりその他のI-131取り込みに関わる分子(TSHR、Tg、TPO、Pax8など)の発現が異なることを確認するとともに、NISの発現度とI-125の取り込みに正の相関があることを確認した。今後は甲状腺癌細胞におけるNISの発現および機能を亢進させる薬剤(過去の文献を参考に選定)とI-131、レンバチニブとの併用効果につき検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitro / in vivoの双方において、NISが発現している甲状腺癌に対するレンバチニブとI-131併用療法による高い抗腫瘍効果が確認された。一方、NISの発現が低下している腫瘍に対する本併用療法の効果は不十分と考えられ、他の薬剤投与によりNISの発現を高めることでI-131の効果を増強できるような治療の開発を目指して実験を進めている。現在のところ当初の研究計画通り順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのin vitro/in vivo実験の結果から、NISを発現する甲状腺癌においてはI-131とレンバチニブの併用により強い抗腫瘍効果が得られる可能性が示された。しかしながら、臨床の現場において問題となるI-131抵抗性甲状腺癌の多くは分化度が低下するに従ってNISの発現・機能が低下するとされている。今後はこれらI-131抵抗性甲状腺癌においてNISの発現および機能を回復させるような薬剤と、レンバチニブ、I-131との併用療法の効果を検討する必要がある。具体的な方法として、I-131抵抗性の甲状腺癌細胞株(K1,FTC-133)に対しMAPK経路の阻害作用を有する分子標的薬(selumetinib、dabrafenib、trametinib)を投与し、NIS、TSHR、Tg、TPO、Pax8などI-131の取り込みに関わる分子の発現をqPCRやウエスタンブロッティングを用いて解析するとともに、薬剤投与後の細胞内への I-125取り込みについてガンマカウンターを用いて検討する。さらに、これらの薬剤とレンバチニブ、I-131との併用療法の効果をin vitroおよびin vivoで検討する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画が当初の予定通り順調に進み、経費を節約することができた。次年度使用額の費用を加えることで分子標的薬、アイソトープの購入や、動物実験による詳細な検討をおこなう予定である。
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