2022 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍溶解ウイルスHF10を用いた頭頚部癌遠隔転移への新たな治療法の開発
Project/Area Number |
22K16933
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
高野 学 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (00812744)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腫瘍溶解ウイルス / HF10 / 頭頚部癌 / 遠隔転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、悪性腫瘍の新規治療法としてウイルスを癌細胞に感染・増殖させ腫瘍を破壊する「腫瘍溶解ウイルス療法」の開発が行われている。本研究では頭頸部癌におけるウイルス療法の臨床応用への基盤とするために抗腫瘍単純ヘルペスウイルスHF10と免疫療法を併用した新規治療法の開発と遠隔転移担癌モデルマウスにおける治療効果や誘導された抗腫瘍免疫を解析している。抗がん剤は細胞分裂に作用して殺細胞効果を引き起こす直接的な抗腫瘍効果を認めるが、特定の抗がん剤には癌による免疫抑制を解除し抗腫瘍免疫を増強する効果があることが報告されている。このような薬剤は免疫応答誘導性抗がん剤と呼ばれているが、我々はその一つのオキサリプラチン(L-OHP)に着目し、HF10との併用による治療効果を検討した。 in vitroにおけるHF10と免疫応答誘導性抗がん剤の併用治療の抗腫瘍効果の検討するために、我々が樹立したマウス口腔癌細胞株NMOC1を用いて、HF10とL-OHPの併用療法の殺細胞効果をMTS assayにて検討した。その結果、併用療法により強力な殺細胞効果を認めた。 続いてin vivoにおけるHF10と免疫応答誘導性抗がん剤の併用治療の抗腫瘍効果を検討した。NMOC1細胞をC3Hマウスの背部皮下に2か所接種し、皮下腫瘍を左右2個作成した。続いてL-OHPをマウス腹腔内に投与し、HF10を右側の皮下腫瘍にのみ接種し、腫瘍の大きさを計測した。すると対照群と比較して、上記治療を施行したマウスにおいては左右の腫瘍共に腫瘍の増大抑制効果を認めた。これらの結果からはHF10と免疫応答誘導性抗がん剤の併用治療による抗腫瘍免疫の増強効果が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HF10と免疫応答誘導性抗がん剤の併用治療については、予備実験などの結果を踏まえて、治療プロトコールを確立することができた。またその治療効果についてもin vitro、in vivoの両面から証明することが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はC3Hマウスの尾静脈よりNMOC1細胞 を接種し肺腫瘍モデル(遠隔転移モデル)の樹立を試みる。モデルを樹立できたら、肺腫瘍に対するHF10と免疫療法の併用治療による治療効果を検討していく予定である。またHF10治療後の腫瘍を採取してリンパ球を抽出し、フローサイトメトリーを施行することで、腫瘍免疫を担う細胞群や制御性T細胞(T-reg)やMDSCなど腫瘍免疫を抑制する細胞群の構成を評価する。それらによって、HF10により誘導された抗腫瘍免疫を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はマウスモデルを用いたHF10と免疫応答誘導性抗がん剤の併用治療の治療効果の検討を中心に行ってきたが、治療により誘導された抗腫瘍免疫の評価は施行することが出来ず、そのために計画していた経費は次年度に使用する予定としている。次年度は肺転移モデルの作成や、モデルを作成後にHF10と免疫療法の併用治療を行い治療後の腫瘍を採取してフローサイトメトリーや免疫染色を施行することで治療により誘導された抗腫瘍免疫の評価を行う予定である。経費としては実験動物(マウス)・実験器具、麻酔薬、細胞培養液・細胞培養実験器具、免疫染色やフローサイトメトリーの抗体などの試薬として使用する予定である。
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