2022 Fiscal Year Research-status Report
樹状細胞を標的とした、オメガ3脂肪酸を用いた新規の眼炎症抑制療法の開発について
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22K16953
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
内 翔平 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (20939277)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オメガ3不飽和脂肪酸 / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
オメガ3脂肪酸(ω-3)を経口摂取させた実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)マウスにおいて、1). 眼内炎症が抑制されること、2). 培養T細胞のTh1およびTh17サイトカインがタンパク質レベル・転写因子レベルで抑制されること、3). ω-3は樹状細胞を介して抗炎症作用を発揮することを明らかにする目的で研究を開始した。 C57BL/6マウスに等カロリーに調整したω-3もしくはω-6を含有した餌で給餌し、安楽死後に回収した脾臓細胞をマイトマイシンC処理して抗原提示細胞を調整した。これらをEAU誘導したマウスから単離したCD4陽性T細胞と共培養し、種々の炎症性サイトカインの発現量および3H-チミジン取り込み量を指標とした増殖能を評価した。 結果として、トリチウムチミジン取り込み能評価によるT細胞の増殖能、Th1関連炎症性サイトカインであるIFN-γやTh17関連炎症性サイトカインであるIL-17いずれにおいても、ω-3を摂取したマウス群において抑制された。この結果から、ω-3が抗原提示細胞に直接作用して抗炎症効果を示すことが示唆された。 これらの抗原提示細胞をMACSでそれぞれCD11c陽性である樹状細胞、F4/80陽性であるマクロファージ、B細胞を中心とした残りの細胞に分離単離させた。これらのうち、ω-3を作用させた樹状細胞のみで、ω-6を作用させた群と比較して有意にT細胞の増殖能、IFN-γ、IL-17が抑制された。一方でマクロファージやB細胞を含む残りの細胞においては、いずれもω-6・ω-3群間に有意差はみられず、この結果から、EAUモデルにおいては特に樹状細胞に対して、ω-3が特異的に作用していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本教室の臨床医減少・手術執刀医減少に伴い、眼科臨床医として年間200件以上(平均5件以上/手術日)の白内障手術・前眼部手術・緑内障手術・硝子体手術を執刀しており、山口大学病院における2022年度白内障手術執刀数としては教室内で最も多かった。その他、臨床スタッフ医の体調不良等も相まって、外来医長としての臨床業務にも忙殺され、目的とする実験までの進捗に至ることが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
追加実験としてω-3が樹状細胞に作用しEAUを抑制することをin vivoで確認するために、養子細胞移植(adoptive transfer)を行い、vivoでの抗炎症効果を確認予定である。また、マウス個体を介さず直接樹状細胞をω-3不飽和脂肪酸であるDHAやEPAと共培養させる実験も予定している。 ω-3の代謝産物であるプロスタグランジン、ロイコトリエン、レゾルビン、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体リガンド、CYP450などのDCへの関連、ω-3を作用させたDCに対し、次世代シーケンサーを用いたシングルセルRNA-seq解析などを予定している。
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Causes of Carryover |
本年度の実験内容に変更はなかったが、実験進捗が想定よりも滞っていることにより、実験費用に未使用額が生じた。次年度は実験動物飼育費、特殊飼料であるω-3給餌用の飼料調整・購入、その他消耗品の購入に使用する予定である。
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