2022 Fiscal Year Research-status Report
緑内障におけるゲノムの酸化損傷の影響についての検討
Project/Area Number |
22K16954
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中武 俊二 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (30847091)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 緑内障 / ゲノムの酸化損傷 / 神経変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化ストレスは細胞の老化や異化、死などを引き起こし、緑内障を含む様々な神経変性疾患に関与するが、酸化がどのようなメカニズムで神経細胞死を引き起こすのかは十分に分かっていない。活性酸素が標的とする様々な物質の中で、我々は生命活動の根幹を担うゲノムへの酸化に注目して研究を進めてきた。網膜色素変性モデルを用いた過去の研究において、ゲノム酸化損傷はミクログリアを活性化させ、神経炎症を介して網膜変性を増悪させることを明らかにした(Nakatake S, et al., JCI Insight. 2016)。本経路の普遍性について検証するため、本研究では緑内障モデルにおけるゲノムの酸化損傷の役割を検討する。ゲノム酸化損傷がどのようにして神経節細胞死を引き起こすのかを解明するとともに、ゲノム酸化損傷経路をターゲットとした新しい緑内障治療薬を開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
緑内障モデル動物は、グルタミン酸トランスポーターであるGLAST(glutamate-aspartate transporter)をノックアウトさせたGlast-/-マウスとNMDA(N-methyl-D-aspartate)硝子体投与マウスの2種類を用いた。Mutyh-/-マウスは既に作成済みであり、まずはMutyh-/-マウスに対しNMDAの投与を行い、緑内障モデルマウスにおけるMUTYHの役割を検討した。評価項目は、ゲノムの酸化損傷については8-oxoGの染色を、生存神経節細胞については抗Brn3a抗体陽性細胞密度を、ミクログリアについては抗Iba-1抗体陽性細胞密度を測定した。また、SSBs、PARP、AIFに対する抗体を用い免疫染色を行った。それぞれのマウスの眼球摘出を行い、片眼をflatmountで網膜全体の評価を行い、もう片眼をパラフィン切片にして評価を行った。今回、新たにGlastとMutyhをダブルノックアウトしたGlast-/-; Mutyh-/- マウスを作成し、Mutyhの神経細胞死やミクログリアの活性に与える影響についての検討した。また、Glast-/-マウスとNMDA硝子体投与マウスにおいてMutyh-/-マウスを用い、網膜サンプルを用いてマイクロアレイを行う事でMutyhのノックアウトにより発現が変化した遺伝子の検索を行ったが、検索について時間を要しており、2022年度内にマイクロアレイを終了することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に終わらなかったマイクロアレイを行う。その結果を基に、Mutyhの有無で発現差の見られた遺伝子の検索を行い、その遺伝子とMutyhの機能との関連の解析を行う。さらに、各マウスに対してPARP阻害剤として用いられているNU1025の投与を行う。投与経路は全身投与として腹腔内投与を、局所投与としては硝子体内投与を行う。投与するタイミングはNMDA硝子体マウスについては腹腔内投与群はNMDA投与後毎日腹腔内投与を行い、硝子体内投与群はNMDA投与と同時に硝子体内投与を行い、いずれの群も7日後に眼球摘出を行い評価する。Glast-/-マウスについては出生後毎日腹腔内投与を行い、7日後に眼球摘出を行い評価するが、出生直後のマウスへの硝子体内投与群は困難なため、硝子体内投与群は作成しない。評価については摘出眼球の片眼をflatmountで網膜全体の評価を行い、もう片眼をパラフィン切片にし、抗Brn3a抗体陽性細胞の密度とIba-1抗体陽性細胞の密度を測定し、神経細胞死とミクログリアの活性にどのような影響を与えるかを評価する。
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Causes of Carryover |
少額であるが、次年度へ繰越となった。免疫染色の際に用いる抗体の購入に充てる予定である。
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