2023 Fiscal Year Research-status Report
スフィンゴシン1リン酸受容体3を標的とした新しい角膜感覚神経の再生治療戦略の樹立
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22K16958
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
安田 慎吾 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20772271)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | S1P / Sphingosine / trigeminal nerve / wound healing / cornea |
Outline of Annual Research Achievements |
角膜上皮欠損の治癒過程では、迅速な治癒が透明性維持、感染予防の 観点で必須である。上皮の再生に次いで上皮下の神経再生が続き、神経再生の障害は角膜上 皮恒常性維持に不利である。また三叉神経第一枝の損傷は角膜上皮障害と角膜創傷治癒遅延 (遷延性上皮欠損)が惹起され(神経麻痺性角膜症)、重症例では角膜潰瘍から角膜実質の 融解、穿孔を来たし眼球崩壊に至る。極めて難治性で臨床現場では非常に苦慮する。病態や 根治療法については充分に解明されておらず、対症療法のみで根治的な治療法がない。神経 麻痺性角膜症の克服には、その病態解明とそれに基づいた治療戦略の確立が望まれる。初年度の結果として我々は角膜三叉神経にS1PR3が発現していることを確認した。 S1PR3欠失マウス(米国MMRRCから導入され、所属で使用中)および同一背景野生型 (C57BL/6)マウスに同様に全身麻酔後、角膜中央に2mm径の角膜擦過除去を作成した。 この モデルでは24時間程度で角膜上皮は再生するため、創作成直後、6時間後、12時間後、18時 間後、24時間後、30時間後でフルオレセイン染色施行後の角膜上皮剥離面積を観察し比較検討を行った。結果として各タイムポイントで角膜上皮擦過後の欠損面積はC57BL/6, S1PR3間に有意な差を認めなかった。P>0.05
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画書の予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
三叉神経破壊による神経麻痺性角膜症モデルにおけるS1PR3遺伝子喪失の影響の検討 研究協力者の岡田由香教授はマウス三叉神経第1枝を頭蓋外から定位脳手術の手法で熱凝固 することで神経麻痺性角膜症モデルの安定した作成に成功した(Okada et al. Lab Invest. 2018)。凝固条件の弱い軽症モデルでは、角膜中央部の神経は消失したが、輪部の神経は減 少にとどまった。この時、輪部上皮基底層の幹細胞マーカーの減弱と同部での細胞増殖の抑 制が観察された。角膜S1PR3欠失マウスおよび同一背景野生型 (C57BL/6)マウスに上記モデ ルを作成し角膜上皮作成後の創傷治癒の程度評価、三叉神経知覚閾値の測定を1日から2ヶ月ま で経時的に行う。ホールマウント標本Tuj1染色で神経退縮の程度を評価する。各種遺伝子、 蛋白質発現の解析を上記方法と同様に行う。 培養三叉神経の軸索延長に対するS1PR3欠失およびS1PR3阻害薬の影響の検討 所属の岡田由香教授らの方法(Okada Y, et al. Lab Invest 2020)を用いて、S1PR3欠失マウス と野生型マウスの三叉神経から神経細胞を培養し、軸索の延長を直接観察する。野生型神経細胞では、S1PR3阻害薬(CAY10444)の添加による影響を観察する。(三叉神経摘出を岡田由香教授、神経細胞培養を教養部生物学 平井秀一教授、他の手技を申請者 安田慎吾が 行う。)
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Causes of Carryover |
実験計画遂行にあたり当教室の在庫試薬を使用できたため計画より使用額が少なかった。
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