2022 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢・胆汁酸代謝物を介した眼移植片対宿主病の新規治療開発
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22K16982
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 真理 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (50936268)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性移植片対宿主病 / ドライアイ / 腸内細菌叢 / 胆汁酸 / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液悪性疾患の根治療法である造血幹細胞移植において、血液提供者 (ドナー)の免疫機構が受血者 (レシピエント)の全身の標的組織を攻撃する疾患である慢性移植片対宿主病 (chronic graft-vs-host disease: cGVHD) が大きな問題となっている。cGVHD では肝臓、肺、皮膚、消化器、眼等の多臓器に慢性炎症と病的線維化が起こり生命を脅かす。その中で、眼 cGVHD は失明・視覚障害に陥ることもある重症ドライアイを引き起こす。cGVHD 関連ドライアイは骨髄移植後 2 年間で約半数の患者で発症し、眼はcGVHDにおける頻度の高い標的臓器として知られている。現在眼 cGVHD に対して、人工涙液点眼、角膜保護剤、ムチン産生促進剤、ステロイド点眼等を駆使して治療が行われている。しかし、これらは対処療法に過ぎず cGVHD の病態メカニズムに基づく根本的な治療方法は存在しないという問題がある。申請者らはcGVHD モデルマウスに対し抗菌薬ゲンタマイシン経口投与がcGVHDを顕著に抑制し、腸管内容物・血清中の胆汁酸代謝物濃度にも影響を与えていることを見出した。本研究では、同モデルマウスに加えヒト眼 cGVHD 患者における腸内細菌叢・胆汁酸代謝物の影響を明らかにすることで、病態メカニズムの解明、新規治療/予防法の開発を行う。現在、ゲンタマイシン投与、種々の胆汁酸投与を行なったcGVHDモデルマウスにおける各種胆汁酸濃度、腸内細菌叢解析が終了し、それらの治療群に特徴的な細菌叢が明らかになりつつある。また、cGVHD患者の便サンプルの回収が終了し、現在腸内細菌叢解析が進行中であり、ヒトのcGVHD患者においても腸内細菌叢の治療ターゲットとしての可能性を追求している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
cGVHD患者の便検体を採取が終了し、現在腸内細菌叢解析と胆汁酸代謝物濃度の解析が進行中である。また、胆汁酸と抗菌薬投与を行なったcGVHDモデルマウスにおいて、次世代シークエンスを用いた腸内細菌叢解析を行い、Species(種)レベルの影響を解析し、それら治療群に特徴的な細菌叢が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
cGVHD患者の腸内細菌叢解析、胆汁酸濃度解析を結果とcGVHDモデルマウスを用いた実験から得られた知見を比較し、cGVHD患者においての腸内細菌叢と胆汁酸の関連を追求する。具体的には、cGVHDの重症度や有無と関連する細菌群を明らかにし、また各種胆汁酸濃度とcGVHDの重症度との相関がないか検討する。
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