2022 Fiscal Year Research-status Report
低酸素応答システムを利用したリンパ節移植~新たなリンパ流誘導による浮腫治療
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22K16986
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
草島 英梨香 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (30813547)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 / 低酸素応答因子 / HIF-1α / リンパ管新生 / リンパ節移植術 |
Outline of Annual Research Achievements |
続発性リンパ浮腫は進行するにつれて慢性化し、リンパ管は線維化が亢進し、やがて完全に閉塞する。慢性化したリンパ浮腫に対する外科的治療において、線維化の強い重症例では血管柄付きリンパ節移植術(Vascularized lymph node transfer; VLNT)が行われるが、下流のリンパ流が滞っている場合は治療効果が限定的となる。われわれはこれまで、リンパ節移植術とリンパ流の変化に関する研究を行い、リンパ節を切除することで変化したリンパ流が、リンパ節移植により本来の流れに回復することを示した。また、血管柄付きリンパ節移植モデルを作成し、移植リンパ節への血流が機能的な高内皮細胞(High endothelial venule; HEV)を保持することを示した。移植したリンパ節の機能的生着には血流の再開とリンパ流の再開が必要とされており、リンパ管新生が早期に成立することは重要であると考えた。近年の研究でHIF1-α活性化薬はVEGF-Cを経由してリンパ管新生を促す可能性が示唆されている。VEGF標的薬は現在、腫瘍に対する血管新生の阻害や、網膜症に対する毛細血管造成の抑制を目的として臨床でも使用されている。その中でもVEGFR-3はリンパ管に特異的に発現し、リンパ内皮細胞の遊走・発現を通じてリンパ管新生に関与している。現在、リンパ脈管筋腫症や肺癌、乳癌などのリンパ行性転移をきたす悪性腫瘍に対して、リンパ管新生阻害の研究が行われているが、VEGF-C/VEGFR-3活性を促し、リンパ管新生を促進する研究は少ない。本研究においては、リンパ節移植術にHIF1-α活性化薬投与によるVEGF活性を併用し、正常なリンパ流へバイパスを行うことで、新たなリンパ側副路を誘導することを目的とする。本研究によりリンパ節移植の新たな術式の開発、手術症例の適応の拡大が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生理的にリンパ節が存在する位置へリンパ節を移植することをorthotopic lymph node transfer, リンパ節が本来は存在しない位置へリンパ節を移植することをheterotopic lymph node transferと言う。初年度は、生理的に解剖学的ではない位置へのリンパ節移植を遊離移植として行い、移植リンパ節へのリンパ流が開通するか検討する。マウス膝窩リンパ節、鼠径リンパ節を用いて下腹部、鼠径部、中腹部へ移植したモデルを作成した。マウスでは解剖学的に鼠径から腋窩へ流れるリンパ管が存在するため、膝窩リンパ節のみ摘出したモデル、膝窩及び鼠径リンパ節を両方摘出、リンパ節摘出の際にリンパ管結紮の有無でモデルを作成してリンパ流の再開有無を観察している。膝窩リンパ節摘出のみでのモデルでは移植したリンパ節へのリンパ流の再開は認めなかった。また、パテントブルーの足底・足背皮内注入だけでは膝窩リンパ節と鼠径リンパ節は同時には染色されず、鼠径ー腋窩ルートの同定が困難であったため、膝窩リンパ節を摘出した後、鼠径ー腋窩ルートが確立するまで時間を置くモデルでリンパ流の再疎通を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず、異所性遊離リンパ節移植モデルでのリンパ流の再開有無を正位置からの距離ごとによるモデルを作成し観察する。また、血管柄付きリンパ節移植で、血管柄の到達可能な範囲での異所性リンパ節移植モデルでのリンパ流再開有無を観察する。さらに、上記でのモデルにHIF1-α活性化薬を投与し、リンパ節の生着、リンパ管新生の有無を検証する。 術後2、3、4週間でICGおよびPDEカメラを用いたreal time蛍光リンパ管造影検査を行い、リンパ流の観察を行う。さらにFITC dextranを用いて移植組織内のリンパ節が移植先でリンパ系の中で機能しているかどうかについて検証する。 術後4週間で移植リンパ節および周囲のリンパ管組織を摘出し、免疫染色ではMPOやF4/80、CD3抗体等を用いて好中球やマクロファージ、リンパ球の浸潤の程度を、D2-40、LYVE-1等を用いてリンパ管新生の程度を評価・比較する。また、採取した組織の一部からmRNA抽出を行い、遺伝子発現をreal time PCRで検討する。
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Causes of Carryover |
初年度の計画として、動物モデルの作成を行い解析を開始する予定であったが、動物モデルの確立に難渋し、初年度で計上した動物購入費、試薬購入費の一部を次年度に計上することとした。
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