2022 Fiscal Year Research-status Report
皮膚深達性急性創傷に対する新たな局所療法の開発 ―間葉系幹細胞エクソソームの応用
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22K16993
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 千草 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (70893767)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 羊膜由来幹細胞 / エクソソーム / マウス / 急性創傷 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外小胞の一種であるエクソソームは、様々なmRNAやmiRNA、蛋白質などの細胞内物質を別の細胞に運搬し受取先の細胞の性質を変化させる。このようにエクソソームは細胞に能動的に働きかけ、内包する物質がもつ総合的な効果で細胞の性質を変化させる。エクソソームは放出する細胞によってその特性が異なるが、特に間葉系幹細胞由来のエクソソームは糖尿病性潰瘍の創傷治癒に効果を示すなど新しい治療法として注目を集めている。エクソソームは細胞から採取できるが、細胞と異なり滅菌可能で、汎用的な製品として臨床応用しやすいという特徴がある。 形成外科医が日常診療で扱うことが多い、熱傷、化学熱傷、凍傷等の急性創傷では皮膚深部まで損傷されることも多く、治癒後の皮膚は健常皮膚に比べて伸展性に乏しく乾燥しやすいなど、機能面や整容面で大きく劣る。我々は組織再生促進作用と抗炎症作用をもつ羊膜由来間葉系幹細胞エクソソームに着目し、これらを皮膚の深達性急性創傷に作用させることで既存の治療よりも早期の治癒が得られるだけではなく、機能面や整容面でも勝る新規の局所治療法の開発を目指す。 広範囲熱傷では受傷早期には浅達性Ⅱ度熱傷と思われた創が、経時的に増悪し、深達性Ⅱ度熱傷に進行することを経験する。浅達性Ⅱ度熱傷が深達性Ⅱ度熱傷へ進行する原因として、うっ血帯と呼ばれる領域の環境に依存すると考えられている。 熱傷器具を用いてマウス背部に真皮内に限局した熱傷創を作成し、経時的な治癒過程を肉眼的・組織学的に観察する。浅達性Ⅱ度熱傷から深達性Ⅱ度熱傷に進行するモデルを作成し、羊膜由来幹細胞由来のエクソソームを作用させることで、浅達性Ⅱ度熱傷から深達性Ⅱ度熱傷への進行を予防できるかを検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標として急性深達性創傷モデルを作成し、創傷治癒が遅延することを確認することと、羊膜由来幹細胞のエクソソームを抽出する手技を確立することを挙げていた。急性深達性創傷モデルとしてはマウスの背部にⅡ度およびⅢ度の熱傷を作成し、組織学検査で組織の変性を確認した。 また羊膜由来幹細胞の培養上清からエクソソームを抽出し、その定量化を試みた。 以上のことから、初年度の達成度としてはおおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
創傷治癒が遅延するマウス熱傷モデルに羊膜由来幹細胞エクソソームを投与し、創傷治癒に及ぼす影響を解析する。 今後、解析数を重ね、薬剤による創傷治癒の期間や創傷の収縮率等の差を検証し、統計学的に解析する予定である。 さらに潰瘍局所の創傷治癒に関わる遺伝子発現、ならびにタンパク発現をはじめとした分子生物学的検討を進める。凍傷や化学熱傷等の急性深達性創傷モデルの作成も検討する方針である。
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Causes of Carryover |
実際にマウスへ投与するために必要な量・必要な濃度のエクソソームの抽出作業は次年度に行う予定である。エクソソームの抽出量に応じて費用がかさむため、本年度の残額を次年度で使用する予定である。
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