2022 Fiscal Year Research-status Report
リンパ浮腫治療の次なる一手~活性化大網培養上清を用いた移植リンパ節再疎通率の向上
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22K16994
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 梨里 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (00813544)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 内蔵脂肪 / 免疫・循環系 / 機能的リンパ節移植法 / 大網・腸間膜 / milky spot |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性腫瘍手術の際に行われるリンパ節郭清術は蜂窩織炎などの繰り返す炎症により続発性リンパ浮腫が慢性に進行することがあり、難治性である。リンパ浮腫へリンパ節を移植を行う際の問題点として移植リンパ節の生着率の低さが指摘されている。 一方、当教室ではリンパ節移植がリンパ再構築にもたらす影響を動物モデルを用いて検証してきた実績があり、またマウスの後肢でのリンパ浮腫モデルを作成しリンパ浮腫を生じた後肢での組織学的変化や分子生物学的微小環境に対して研究を行ってきた。 リンパ節移植術における新たな移植材料として、リンパ節移植術にリンパ管新生作用や血管新生を持つ生理活性化物質を多く分泌する活性化大網の培養上清に着目した。大網は感染巣に対する充填法などにしばしば利用されてきた。近年はそれに加えて、活性化させた大網はvascular endotherial growth factor(VEGF)やstromal cell-derived factor(SDF-1α)などの活性化物質を多量に放出することがわかってきた。活性化大網からのパラクライン効果によりリンパ管新生や血管新生が促されることで、移植リンパ節の再疎通率を向上する可能性を秘めている。リンパ節移植の際に活性化大網の培養上清を付加することで再疎通率へ与える影響を、動物モデルを用いて検証し、より効果的な外科的治療を行うことを本研究の目的とした。また、マウス後肢リンパ浮腫モデルに活性化大網培養上清を投与することでリンパ浮腫が改善するかを検討することを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は大網の活性化、大網を安定して操作する手技の獲得を目標とした。また、活性化大網培養上清をマウス後肢リンパ浮腫モデルへ投与し、リンパ浮腫の改善に差があるか検討を行うことも検討することにした。大網の活性化のためにマウスの腹腔内へポリデキストラン粒子を注入、大網が肥大していることを確認した。マウスにとっては腹腔内への異物注入及び開腹、大網全切除という大きな侵襲となり、活性化した大網はマウスの膵臓と非常に近接しており、術後の膵臓損傷などでマウスが死亡しないような操作をする手技を習得した。同個体で、鼠径リンパ節郭清及びリンパ浮腫を発症させる手技を行うため、安定した術後経過を確保できる手技を習得することを目標とし、達成を間近としている。
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Strategy for Future Research Activity |
活性化大網の培養上清および培養培養上清ゲル作成の手技が安定した後、有茎鼠径リンパ節の膝窩への移植モデルへ投与、リンパ管の再疎通率へ差が生じるかの検証、同じく培養上清をリンパ浮腫モデルへ投与しリンパ浮腫の改善度に差が出るかを検証する。活性化大網はVEGFやSDF-1などのサイトカインを有すると目されされ、培養上清に含まれる各種サイトカインをPCRで検証する。平行して、マウスリンパ節移植モデルを作成し、これに前項で得られた培養上清を添加することでリンパ節移植における生着およびリンパ管新生の効果を検証する。
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Causes of Carryover |
前項の実験進捗の遅れにより、本年度施行する予定であったマウス活性化大網から培養上清を採取し、PCRで検証することができなっかった。よって本年度の当該予算にあたる経費の一部を次年度で使用する予定である。
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