2022 Fiscal Year Research-status Report
ラット粘性嫌悪条件付け試験を利用した口腔内触覚受容機構の解析
Project/Area Number |
22K17006
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
中富 千尋 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80878273)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粘性テクスチャー認知 / 食感認知 / 粘性嫌悪条件付け試験 / 増粘剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の舌口蓋粘膜に存在する機械受容器の組織構造は明らかにされてきたが、機能に関しては未解明の点が多く残されている。口腔内触圧覚が皮膚触圧覚と比較して鋭敏という特殊性を持つことや、摂食・構音という口腔生理機能に必須であることからも、口腔内機械受容器の生体でのテクスチャー受容・認知における機能の解明は重要である。本研究では、ラットでの摂食行動実験を用いて、口腔内での粘性テクスチャー受容・認知機構を明らかにすることを目的としている。 テクスチャー受容・認知を明らかにするためには、味や匂いなどの影響を排除した動物実験系が必要であるため、2022年度は、ラット嫌悪条件付け学習を用いた口腔内粘性認知試験の実験条件の詳細な検討を行った。試験食材として使用するカルボキシメチルセルロース(CMC)溶液に対する味神経応答を記録したところ、ラットがセルロースフレーバーを認知している可能性が示唆されたため、嫌悪条件付けに先立ってCMCを事前摂取させ、味に対する潜在的抑制を誘導し、味に対する嫌悪学習のみを抑制できないかを検証した。その結果、短時間(12時間)のCMCへの事前曝露により味への嫌悪学習が阻害されることが明らかになった。また、長期間(7日間)の事前曝露では粘性への嫌悪学習も阻害されることが明らかとなった。これにより、CMCの事前摂取の期間を調節することで、粘性特異的な嫌悪学習の獲得が可能となった。2022年度は、これらの研究内容を論文としてまとめ、英文学術誌に投稿し受理された。今後、特定の機械受容体チャネル分子の発現抑制や、特定の脳部位を破壊した動物を用いてこの解析を行うことにより、粘性テクスチャーの認知メカニズムを検討することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は動物行動実験の確立に留まっており、粘性テクスチャー受容分子の探索には至っていない。味神経応答の記録からラットが増粘剤の味を認知している可能性が示唆されたため、味の要素を排除した条件下でなければテクスチャー認知の評価ができないことから、味に対する潜在的抑制を生じさせる条件を細かく検討する必要があった為である。検討の結果、粘性のみに限定して嫌悪学習を生じさせる条件を見出すことができ、今後の実験を確実に進めるための評価系を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は舌口蓋粘膜の機械受容器分布を検索する。機械受容器に選択的に取り込まれる蛍光色素FM1-43を事前投与し、舌口蓋の凍結切片を作成する。以下のマーカータンパクを指標とし、神経線維および機械受容器の蛍光免疫染色により局在を明らかにする。神経線維:PGP9.5、 有髄線維:Neurofilament H、マイスネル小体:TrkB、小体構造の検出:Nestin(シュワン細胞の染色)、味蕾および成熟メルケル細胞:Keratin8。次に、機械受容チャネルタンパクPIEZO2と、皮膚機械受容器での発現が確認されているTRPV1、TRPV4、ASIC1、ASIC2の蛍光免疫染色を行う。発現確認されたチャネル分子が実際に機能しているか調べるために、Ca2+イメージング実験を行う。舌前・後方部、口蓋前・後方部に逆行性神経トレーサーであるフルオロゴールドを注入し、標識された単離三叉神経節ニューロンに対して、浸透圧機械刺激時の細胞内Ca2+濃度変化を調べる。発現確認した機械受容チャネル阻害薬の投与により応答が抑制されるかを明らかにする。
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Research Products
(1 results)