2022 Fiscal Year Research-status Report
P. gingivalisの血管内皮環境における生存戦略の解明
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22K17013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 恵理子 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (00755069)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / Porphyromonas gingivalis / 細胞内感染 / 細胞内輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病原性細菌であるP. gingivalisは、歯周病の慢性化のみならず、歯周結合組織の毛細血管血管を介して全身に伝播し、さまざまな疾患に関与していることが知られている。代表者が所属する研究室では、共同研究により三次元歯肉モデルを作製し、歯肉モデルの上皮粘膜側よりP. gingivalis を感染させたところ、歯肉モデルの血管内皮細胞とP. gingivalisとが共局在すること、P. gingivalisは血管内皮細胞内で長期感染が可能であることがわかった。これは、歯肉上皮細胞においてはP. gingivalisは長期生存できない結果とは大きく異なっていた。よって、歯周病の組織内感染拡大、慢性化、ひいては全身伝播に至る経路には、血管内皮細胞が重要な役割を果たしている可能性が考えられる。しかし、P. gingivalisの血管内皮細胞への侵入機構および血管内皮細胞内動態は未だ不明である。そこで本研究では、P. gingivalisの血管内皮細胞における宿主免疫システムからの生存戦略を明らかにすることにより、歯周病の慢性化に至る経路とその分子基盤に迫ることを目的とする。 2022度は、①血管内皮細胞内に侵入したP. gingivalisの生存期間および生存数の検討、②P. gingivalis の血管内皮細胞内における細胞内動態の形態学的解析を行なった。単層培養した血管内皮細胞もしくは歯肉上皮細胞にP. gingivalisを感染させたところ、歯肉上皮細胞と比較し血管内皮細胞へ感染させた方が、P. gingivalisの細胞内生存期間が長く、生存数が多いことが明らかとなった。次に、P. gingivalisの血管内皮細胞における局在を明らかにするために、免疫細胞化学により染色し、共焦点顕微鏡を用いて観察した。その結果、血管内皮細胞侵入後P. gingivalisが局在する細胞内小器官を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P. gingivalisが血管内皮細胞内において長期生存すること、血管内皮細胞内侵入後にP. gingivalisが局在する細胞内小器官を同定することに成功し、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に同定した細胞内小器官の機能が、P. gingivalisによりどの部位で阻害されているかを検討する。検討により得られた候補タンパク質の機能発現実験もしくは機能消失実験を行い、血管内皮細胞に感染したP. gingivalis の長期生存の可否を討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で、本実験に使用する試薬や機器の納品が遅延し次年度に納品が持ち越されたこと、当初参加を予定していた海外学会に新型コロナの影響で参加できず学会参加費と旅費が不要であったことから、次年度使用額が生じた。 2023年度は、2022年度同定した細胞内小器官の機能障害因子を詳細に探索し、その候補因子の機能発現実験もしくは機能消失実験を行うことにより、血管内皮細胞に感染したP. gingivalis の長期生存の可否を検討する。
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