2023 Fiscal Year Annual Research Report
p53破綻とTGFβの連動がもたらすエピジェネティックな発がん機構の解明
Project/Area Number |
22K17019
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊達 悠貴 熊本大学, 発生医学研究所, 特別研究員(PD) (70914240)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | p53 / TGFβ / Myc / 骨肉腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
【骨肉腫発症にTGFβシグナルが必要である】 p53破綻性の骨肉腫モデルマウス(通称OSマウス)において、p53の遺伝子異常が、がん微小環境に由来する炎症刺激を介して、発がんに必須なMycの過剰発現をもたらすことが示唆されている。 OSマウスが発症した骨肉腫の組織切片を用いて免疫染色を行ったところ、腫瘍マーカーKi67陽性の腫瘍細胞において、TGFβの発現が顕著に亢進していた。さらに、これらの腫瘍細胞においては、TGFβのエフェクターであるリン酸化Smad2に加え、がん遺伝子Mycも強発現していた。OSマウス由来のOS細胞においては、TGFβ阻害剤によってMycの発現は顕著に低下する。この傾向は、ほとんどのヒト骨肉腫細胞株においても同様であった。OSマウスからTGFβシグナルを包括的に無効化させたOS;Tgfbr2fl/+マウスにおいては、骨肉腫の抑制効果と寿命の延命効果がよりはっきりと見られるようになった。OSマウスに市販のTGBβ阻害剤(SB431542)を腹腔内注射にて投与すると、延命効果が見られた。 以上より、OSマウスにおける骨肉腫発症においてTGFβシグナルが必要であることが、生体レベルで遺伝学的および薬理学的に示された。 【TGFβシグナルはm340を介してMyc過剰発現を誘導する】 TGFβがMycを過剰発現させる原因として、TGFβ反応性のMycエンハンサー「m340」を同定している。このm340をOSマウスから削除したOS;m340△/△マウスにおいて、骨肉腫の抑制効果と延命効果が見られている。また、m340に位置する特定の1つのRunx結合サイトだけを破壊したOS;m340Rmt/mtマウスも延命傾向を示している。以上より、骨肉腫発症を促進するTGFβが、発がん性エンハンサー「m340」を介してMycの過剰発現を誘導していることが、生体レベルで示された。
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