2023 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病の再発や慢性化の原因として細菌Persisterの関与を明らかにする
Project/Area Number |
22K17020
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
山崎 亮太 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (70841998)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Persister / 歯周病原性細菌 / 殺菌 / 過酸化水素 / A.actinomycetemcomitans |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、薬剤治療におけるPersisterのリスクを明らかにし、そのメカニズム解明と完全に排除する方法を見出し、歯周病の慢性化や再発の抑制に関する新たな知見を得ることを目的としたものである。歯周病はおもに口腔内の病原細菌によって引きおこされる疾患であるが、歯周病患者に対しいかに薬剤を使用しても口腔病原細菌を完全に排除することは難しく、治療後はすぐに増殖し再発のリスクを生じる。薬剤治療に対し細菌が生存してしまう原因の1つとしてPersister(パーシスター)の存在に着目し、その存在率や形成メカニズム、さらには排除の方法を明らかにする。 初年度では、歯周病原細菌の1つとされるAggregatibacter actinomycetemcomitansを対象とし、歯科臨床で用いられるさまざまな治療薬を作用させた際のPersisterの存在を検証した。その結果、過酸化水素処理した際に約0.5%程度の細菌が生存し続けることを明らかにし、これが遺伝的な変異を伴わない(薬剤耐性菌ではない)細菌、すなわちPersisterであることを証明した。 次年度では、過酸化水素処理したA. actinomycetemcomitansがどのようなメカニズムでPersisterを形成しているのかを調べるために、RNAシーケンスを行い、過酸化水素処理群と未処理の群での遺伝子発現量の違いを調べた。その結果、オートインデューサーAI-2の取り込みに関するLsrトランスポーターがPersister形成に重要であることを明らかにし、Persister形成のメカニズム解明の一助となった。また、Persisterに対してはマイトマイシンCの作用により完全に死滅させられることがわかり、歯周病を根治させる可能性を示唆させる結果となった。 以上の結果から、歯周病の持続にPersisterが大きく関与している可能性を示唆し、そのPersisterのメカニズムや排除の方法を明らかにし、Persisterが今後の歯科治療における重要な要素であることを示した。
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