2022 Fiscal Year Research-status Report
真菌二次代謝産物Terreinが骨ホメオスタシスに及ぼす影響の免疫学的解析
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22K17036
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂井田 京佑 岡山大学, 大学病院, 医員 (20907927)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 真菌二次代謝産物Terrein / 骨粗鬆症 / 免疫担当細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内における骨粗鬆症患者数は約1,300万人に達し,病的骨折リスクを低下させるための適切な予防策を提供することが喫緊の課題である。骨破壊疾患の原因として破骨細胞の亢進が根本にある。現在,破骨細胞の活性を抑制することを意図し,抗RANKL抗体やBP製剤の適用が進められているが,これらは全身性に作用するため,低カルシウム血症や抜歯時の顎骨壊死等の悪影響が懸念される。申請者は,真菌二次代謝産物Terreinが破骨細胞分化を強力に抑制し,マウス骨粗鬆症モデルにおける大腿骨吸収抑制作用を見出した。Terreinは骨破壊が亢進する炎症部位において特異的に作用する抗RANKL効果が期待されるも,その機序は未だ不明な点が多い。 本研究では,マウス骨粗鬆症モデルを用いて,真菌二次代謝産物Terreinの免疫細胞に対する作用ならびにその機序を検証する。実験条件として,①Terrein投与群,②PBS投与群(negative control),ゾレドロン酸投与群(positivecontrol)の3群に分けて以下の評価項目での検討を行う。 【① 炎症性骨破壊病巣部に集積する免疫細胞動態の解析:令和3-4年度】 骨粗鬆症を誘導開始と同時に試験薬(Terrein,10-30 mg/kg,または,ゾレドロン酸,0.1mg/kg)を投与し(腹腔投与は週2回),8週間後に安楽死させ,炎症性骨破壊が起きている骨組織および周囲組織を摘出し,大腿骨成長周囲軟組織を採取し,細胞を分離した。そして,各種免疫担当細胞特異的表面マーカで染色後,Flow Cytometryにて免疫細胞(好中球,マクロファージ(M1またはM2),CD4陽性IL-17A陽性Th17細胞,制御性T細胞等)の動態を解析した。病巣局所で産生される炎症性サイトカインの定量は,定量性real-time PCR法にて解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19感染拡大のため、計画していた動物実験の実施が予定通り進捗しなかった。骨粗鬆症マウスの組織採取がうまくいかず、実験が思うように進捗しなかった。 今後は手技に慣れてきたためスムーズに実験を進められることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
【② 標的免疫細胞に対するTerreinの薬理効果の検証】 上記実験①の結果をもとに,Terreinの標的となりうる免疫担当細胞に対する直接的な抗炎症効果を検証する。好中球に対する効果が強い場合,ヒト白血病細胞株HL-60細胞に1.25 % dimethyl-sulfoxideを添加して好中球様に分化させた後,Terrein投与後のスーパーオキサイド産生能や遊走能等に及ぼす影響を検証する。マクロファージ系に対する効果が期待できる場合は,マウスから摘出した腹膜マクロファージを用いて,M1またはM2分化に影響を及ぼすかどうかをFlow cytometryを用いて解析する。さらにFITC蛍光ビーズに対する貪食能の測定やTNF-a等の炎症性サイトカインやRANTES等のケモカインの産生性をELISA法にて検討する。Th17細胞に対する効果が期待できる場合,通法に従い,マウスナイーブCD4陽性T細胞を採取し,リコンビナントIL-6(10-30 ng/ml)およびTGF-b(1-5 ng/ml)の存在下で,CD3およびCD28を刺激して培養する。そして,Terreinを投与した際のIL-17産生能等に及ぼす影響をFACSやELISA法等を用いて検証する。また,先行研究の結果から,TerreinはCa2+のシグナル伝達経路を抑制する可能性(RANKL誘導性のPKCa/bIIのリン酸化抑制)が示唆される。そのため,上記のin vitroで用いる細胞における,Ca2+の細胞内取り込みを始めとしたCa2+シグナル伝達経路への影響をwestern blotting法で検討する。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大のため、計画していた動物実験の実施が予定通り進捗しなかった。今後は提出済みの研究計画にあわせて,必要分を適宜活用していく予定である。
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