2022 Fiscal Year Research-status Report
非破壊試験及び固体NMR法をモダリティとしたフッ化スズ含有歯磨剤の根面齲蝕予防
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22K17047
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柴崎 翔 日本大学, 歯学部, 助教 (70822633)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フッ化スズ / 根面齲蝕 / 齲蝕予防 / 超音波透過法 / 固体核磁気共鳴法 |
Outline of Annual Research Achievements |
フッ化スズは抗齲蝕性,象牙質知覚過敏抑制,口臭および酸蝕抑制効果などを有していることから,象牙質知覚過敏症への応用が欧米を中心に行われている。そこで,この歯磨剤の根面齲蝕予防への応用を,脱灰根面象牙質の機械的性質の変化を非破壊的かつ経時的に観察可能な超音波透過法から把握するとともに,化学的組成変化を固体NMR法を用い定性化することによって,多面的にフッ化スズ含有歯磨剤の有効性について検討する。 供試した歯磨剤は0.454% w/wフッ化スズ含有歯磨剤とともに,プラセボ歯磨剤としてフッ化スズ以外は同じ成分に調整した歯磨剤を用いた。また歯磨剤を用いず,精製水のみでブラッシングしたものをコントロール群とした。 根面齲蝕歯モデルとして,牛歯歯根部象牙質を用いて4×4×1 mmの板状紙片を製作,耐水性SiCペーパーを用いて#2000まで順次研磨を行ったものにpHサイクルを設定した。すなわち研磨を行った試片に,電動歯ブラシを用いて供試歯磨剤0.1 gを15秒間作用させ,精製水にて水洗・乾燥後,人口脱灰液(0.1 M乳酸緩衝液)に10分間浸漬後,人工唾液に移送浸漬した。この操作を1日2回行い,このpHサイクルを28日間連続して行った。 上述のpHサイクルを設定した試片に対して超音波測定を行うことで,試作歯磨剤によって生じた変化を定量化した。測定に際しては,1から7日までは毎日,7日以降は一週間毎に28日まで行った。同様に上述の実験系で製作した試片のヌープ硬さを測定した。 また根面象牙質表面の性状変化の評価には,レーザー顕微鏡(LSM)および走査電子顕微鏡(SEM)観察から行った。すなわち,歯磨剤を応用した試片の観察を1から7日までは毎日,7日以降は一週間毎にその表面性状の変化をLSM観察した。また,実験終了後の試片については,SEMを用いて形態学的変化を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたものはフッ化スズ含有歯磨剤の根面齲蝕予防に至適なフッ化スズ濃度を検討するものであった。基礎的研究を行った結果,比較対象を0.454% w/wフッ化スズ含有歯磨剤群,プラセボ歯磨剤としてフッ化スズ非含有歯磨剤群あるいは精製水のみでブラッシングを行うコントロール群として設定し,計画を一部変更し検討を行った。また固体NMR法を用いた化学的組成を定性化する検討に関しても,フッ化ナトリウムをエナメル質および象牙質に対して作用させたもの計測し,基礎研究として行った。実験計画はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目ではフッ化スズ含有歯磨剤の根面齲蝕予防効果の評価として,根面象牙質試片に供試歯磨剤の作用およびpHサイクルを1日2回,28日間行った(実験1)。2年目では根面齲蝕進行抑制効果の評価として,事前にpHサイクルを行った根面齲蝕歯モデルに対して実験1と同様な方法で供試歯磨剤を作用させる。すなわち実験1と同様に調整した牛歯歯根部象牙質の板状紙片に1日2回pHサイクルを行い,この操作を1,7,14,21および28日間行う5条件を設定し,脱灰程度の異なる根面齲蝕モデルを作製する。この試片に対して実験1と同様な方法で供試歯磨剤を作用させ,経時的変化を超音波測定およびヌープ硬さ試験を用い評価する。また根面象牙質表面の性状変化の評価には,レーザー顕微鏡(LSM)および走査電子顕微鏡(SEM)観察から行う。 一方、フッ化スズ含有歯磨剤を根面象牙質に作用させた際に生じる化学変化を固体NMR法を用いて定性する。すなわち粉末状にした牛歯歯根部象牙質と供試歯磨剤を精製水中にて震盪・攪拌させ,その後懸濁液を遠心分離し,それを十分に乾燥させたものを固体NMR試料とする。作製した試料を専用試験管に填塞,固体NMR装置(JNM-ECZ-500)から核種19Fおよび31Pから測定試料のスペクトルを得るとともに,レファレンスのスペクトルとともに分析することでフッ化スズによって形成されたフッ化合物とハイドロキシアパタイトの化学的定性を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延による影響で,予定していた海外学会出張を自粛することになり、旅費の使用が少なく済んだ。研究自体は順調に遂行され、基礎研究や、それによる計画の一部変更に伴う物品費として使用した結果,予算との差額が生じた。 繰越金と令和5年度助成金を合わせて,追加実験等の追加購入費にあてることで試料数を増やし実験の効率化とデータの精度向上を図る計画である。
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Research Products
(1 results)