2022 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌細胞でのリソソーム・カテプシン群の分泌と浸潤転移のバイオイメージング
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22K17186
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
坂元 裕 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (40836748)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カテプシン / 癌細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞が浸潤や転移を起こす際にはリソソームから大量のプロテアーゼ(カテプシン群)が分泌される。我々は独自の研究から、扁平上皮癌の浸潤能と相関する種々のリソソームタンパク質を同定してきた。しかし、カテプシン群の分泌過程を同一細胞や個体を用いて、時間軸で追跡された研究は殆ど無い。本研究では口腔扁平上皮癌細胞から分泌されるカテプシン群について、様々なイメージングを組み合わせて追跡する実験を行う。カテプシン群分泌のタイミングや浸潤との関連性を可視化する事により、分子から細胞レベルを経て個体レベルでの動態をミクロからマクロレベルの解析へと広げていく。本研究を通じてこれまで断片的にしか理解していなかったカテプシン群の動態と癌細胞の浸潤と転移のメカニズムについて時間軸を加えた知見へと広げていく。まずリソソーム酵素群のマスター転写因子であるTFEBについて着目した。扁平上皮癌細胞においてTFEBを遺伝子ノックダウンにより抑制すれば、浸潤能や遊走能が劇的に低下することを見出した。しかしノックダウン実験はTFEBの発現低下が確認できたが、TFEB遺伝子の過剰発現した細胞は作製できなかった。増殖能についてTFEBノックダウン細胞とコントロール細胞を用いて比較したが、両者の間に有意な差は認められなかった。これらの結果から、不明な点が多く残されていた癌細胞の浸潤と転移に関して、TFEBが関与する詳細なメカニズムの解明に本研究は有益な情報となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6種類の口腔扁平癌細胞、具体的にはHSC2, HSC3, HSC4, OSC20, SAS,SCC25のに対してリソソーム酵素群のマスター転写因子であるTFEBに関して遺伝子ノックダウンを行った。その結果、いずれの細胞でも浸潤能や遊走能が劇的に低下することを見出した。しかしノックダウン実験はTFEBの発現低下が確認できたが、TFEB遺伝子の過剰発現した細胞を作製している途中である。増殖能についてTFEBノックダウン細胞とコントロール細胞を用いて比較したが、両者の間に有意な差は認められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、in vivo実験系であるヌードマウスを用いた担癌モデルによる浸潤・転移の評価に関する実験を開始している。マウスの皮内・口腔内(舌)・静脈内にコントロール細胞とTFEBノックアウト細胞を移植した担癌マウスモデルを作製しており、血液学的検査、血液生化学的検査、病理組織学的検査等、現在解析中である。マウスを用いた生物発光イメージングでの浸潤能の解析では扁平上皮癌細胞の転移能と浸潤能を解析する目的で、マウスにコントロールおよびTFEBノックアウト細胞の作製を完了した。その際、コントロールおよびTFEBノックアウト細胞にはホタルルシフェラーゼを発現するベクターを加えて発現させている。今後は上記の検査や解析を完成させるとともにTFEB過剰発現細胞の完成を行う予定である。
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Causes of Carryover |
口腔扁平上皮癌細胞でのTFEBの定量や浸潤能の実験に関していえば、昨年度から購入していた研究試薬類を使用したため、本年度新規購入する試薬類が少なかった。そのために未使用額が約110万円になっている。今後は残予算を含めて予定通り、マウスの生体内イメージング解析に必要な試薬類の購入をする予定である。2023年度は学会発表も対面での実施が増えるため、旅費が増える予定である。オープンアクセスでの論文への投稿を考えているため、投稿費も使用する予定である。
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