2022 Fiscal Year Research-status Report
The functions of Dkk1 and Dkk3 in oral squamous cell carcinoma -associated with Wnt5a-Ror2 signaling-
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22K17208
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂本 泰基 九州大学, 大学病院, 助教 (10805261)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / Wnt5a / Ror2 / Dkk1 / Dkk3 / 頸部リンパ節転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、口腔扁平上皮癌(OSCC)の浸潤・転移プロセスにおけるWnt5a-Ror2シグナル経路の詳細な分子機構を解明するために、Wntシグナル経路のアンタゴニストとして報告されている分泌型糖タンパクであるDickkopf(Dkk)1および3について検討を進め、新規分子標的薬開発の基盤となる研究を行うことを目的としている。 OSCC生検組織におけるDkk1および3の発現を免疫組織化学的に検索を行ったところ、Wnt5aおよびRor2と同様に、Dkk1および3ともに正常口腔粘膜上皮ではほとんど発現しておらず、OSCC組織の細胞質に強く発現していた。しかし、症例によって発現強度に差を認めたため、高発現群と低発現群に分けて臨床病理組織学的所見について比較したところ、Dkk1またはDkk3の高発現群はそれぞれの低発現群と比較して、浸潤様式の悪性度および頸部リンパ節転移の発生頻度が有意に高いことが分かった。また、Wnt5aとDkk1がともに高発現している群、そしてRor2とDkk1がともに高発現している群は、それぞれの低発現群と比較して頸部リンパ節転移の発生頻度が有意に高く、疾患特異的累積5年生存率も有意に低く、予後不良であることが分かった。さらに、頸部郭清術を行った症例において正常リンパ節と転移リンパ節組織を用いて免疫組織化学的染色を行ったところ、Dkk1およびDkk3ともに正常リンパ節組織にはほとんど発現しておらず、転移リンパ節組織において高発現していることが分かった。また、OSCC細胞において、Dkk1またはDkk3をノックダウンすることにより、浸潤能が有意に低下することも判明した。 以上の結果から、Dkk1およびDkk3はOSCCの浸潤・転移の亢進に関与し、特にDkk1はWnt5a-Ror2シグナル経路と関与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OSCCにおける浸潤・転移プロセスへのWnt5a-Ror2シグナル経路の関連を解明する上で、Dkk1およびDkk3に着目し、免疫組織化学的染色によるOSCC組織および頸部リンパ節組織での発現検索および臨床病理組織学的所見との関連についての検討を行い、さらにOSCC細胞株における浸潤能についての機能実験を行い、学会発表に至ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画に則り、以下の方策で進めていく予定である。 ①OSCC細胞株におけるDkk1およびDkk3の機能の解析およびWnt5a-Ror2シグナル経路との関連についての検討:Dkk1およびDkk3の発現変動による増殖・遊走への影響をWST-8 assayおよびwound healing assayを用いて検討する。また、Wnt5aを発現変動させた際のDkk1およびDkk3の発現量の変化、またはDkk1およびDkk3を発現変動させた際のWnt5aの発現量の変化を検索する。さらに、Dkk1およびDkk3がRor2を受容体として認識するのかをreporter gene assayを用いて解析する。 ②Wnt5a、Ror2、Dkk1およびDkk3の発現変動モデルでの抗癌剤の効果についての解析:それぞれの遺伝子を発現変動させたOSCC細胞株またはそれぞれのrecombinant human proteinを用いて、頭頸部扁平上皮癌の治療において一般的に使用されている5-FU、シスプラチン、ドセタキセル、パクリタキセルなどの抗癌剤に対する耐性の変化について検討を行う。 ③ヌードマウスを用いたin vivoでの転移能の解析:Wnt5a、Ror2、Dkk1およびDkk3を過剰発現または発現抑制させたOSCC細胞株およびそのコントロール細胞をヌードマウスへ同所性移植し、造腫瘍能および転移能について検討する。原発巣および転移リンパ節の切除標本を作製して観察する。 ④血清中におけるWnt5a、Ror2、Dkk1およびDkk3の発現量の解析:OSCC患者と健常者での血清中の各タンパクの発現量の比較を行う。また、OSCC患者での治療前後または再発や転移の発症前後の発現量の変化を測定することで、OSCCの悪性度に関わるバイオマーカーとしての有用性を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は、先行研究を元に、前年度までに購入していた試薬および実験器具を主に用いて研究を実行できたため、予定よりも使用金額が少なかった。また、コロナ禍で学会もオンライン開催がメインであり、旅費にかかる金額も少なかった。 しかし、次年度では、当初の研究計画に沿って、細胞機能実験用のキット、抗がん剤抵抗性を検討するための各種抗がん剤およびヌードマウス等の購入を予定しており、学会も現地開催となっていくことが予想されるため、繰り越した分を次年度で使用する予定である。
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