2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of new fluoride application using high-concentration acidulated phosphate sodium monofluorophosphate solution (AP-MFP)
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22K17274
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
佐藤 涼一 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (80801472)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フッ化物 / 予防歯科学 / エナメル質 / 象牙質 / ハイドロキシアパタイト / モノフルオロリン酸ナトリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
歯磨剤のう蝕予防成分として使用されているモノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)は、歯質の深部に浸透作用し、生体毒性はフッ化ナトリウム(NaF)の約3分の1であるという小児の高濃度臨床応用時の大きな利点がある。現在、MFPの臨床応用は歯磨剤の成分としての応用に限られており、1000ppmまでの低濃度での報告がほとんどであり、歯面塗布応用を想定した高濃度の報告は存在しない。申請者は「生体毒性の低さと歯質深部へのアプローチが可能なMFPの利点を応用することで、従来法で十分な予防・抑制効果が得られていない酸蝕症や根面う蝕にも対応できる新規予防方法の開発」が可能ではないかと仮説を立て開発を開始した。 本年度はエナメル質を試料として、9000ppmのMFPおよびリン酸によりpH3.6に調整を加えたAP-MFPを歯面塗布し、臨床応用されている従来法のNaF法およびAPF法と歯質耐酸性の違いを検討した。SEM観察、3Dレーザー顕微鏡測定、コンタクトマイクロラジオグラフィーおよび表層のXPS解析の結果、MFP群およびAP-MFP群の処置により従来法同様にエナメル質の耐酸性向上が認められた。さらに高濃度MFPはリン酸酸性にすることで定性的にも定量的にも耐酸性を向上できることが明らかになった。AP-MFP法の耐酸性はAPF法には及ばないものの、エナメル質表層のみではなく深部に作用が可能であり、歯の表層にAPFと同等のフッ化物イオンを保持できる優れた性質を持っていることが明らかになった。また、本方法を検討する際に行った予備実験のデータから、ナノアパタイト粒子と高濃度フッ化物を同時作用させることで歯質表層に耐酸性のコーティング層を形成できる新知見が得られた。次年度以降は象牙質に対するAP-MFPの作用やコーティング形成技術の応用を行い、耐酸性向上の性能を論文にまとめていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予防歯科臨床における従来法(APF法)と比較したAP-MFPのエナメル質耐酸性向上を明らかにし、オープンアクセス英文雑誌Materials(IF:3.748)に3編の原著論文をアクセプト・出版することができた。リン酸によりpH3.6に調整されたAP-MFP群はpH7.0のMFP群と比較してより強い耐酸性の向上が認められた。SEM断面像ではAP-MFP群は、MFP群と比較して表層から10μmほどの信号強度が改善しており20μmより深部の強度も全体的に健全エナメル質と同等まで改善していた。本研究より高濃度MFPはリン酸酸性にすることで定性的にも定量的にも耐酸性を向上できることが明らかになった。本研究の結果よりMFPにも、フッ化ナトリウムのような酸性環境で何らかの取り込みを促進する機序が存在すると考えられる。また、XPSにより歯面の表層に存在するフッ化物イオンの定量を行った結果、AP-MFP群ではMFP群の約2.5倍とAPF群に近接するほどまでフッ化物イオンの量が向上した。実験の進行に伴い多くの新知見が得られており、象牙質への応用や酸蝕症の起因酸に対する抵抗性など複数の研究を同時に進められている。本年度は新たな発見に伴って学会発表も7編と増加し当初の計画以上に進展することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
エナメル質にて有用性を認めたAP-MFPを用いて象牙質の新規フッ化物応用法の開発を目指す。エナメル質よりも有機質の割合が高くイオン交換が活発な象牙質でこそMFPの真価を発揮できるのではないかという仮説を基に、乳酸脱灰に対する象牙質耐酸性を検討する。多孔質の象牙質の構造は反応表面積を増加させ象牙細管内部からMFPの歯質浸透性を高めることが期待できる。また、酸蝕症の予防方法へのAP-MFPの有効性についてもクエン酸を用いたアシッドチャレンジを行い検証する。
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