2022 Fiscal Year Research-status Report
成育期の咀嚼・嚥下機能発達不全がオーラルフレイルを引き起こすメカニズムの解明
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22K17290
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
吉見 知子 長崎大学, 病院(歯学系), 医員 (20805973)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マウス / オーラルフレイル / 顎運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、咀嚼筋にボツリヌストキシン (BoNT/A) 投与を行うことで、顎口腔機能低下モデルマウスを構築し、機能低下により引き起こされる成長期における咀嚼・嚥下機能の顎顔面形態への影響を評価し、オーラルフレイル予防および治療法を検討する。マウスを対象とした顎機能解析を行う上で、健常マウスの基本的な顎運動や筋活動の様式を正しく把握しておく必要があるため、ハイスピードカメラを用いたモーションキャプチャーシステムを応用して、6自由度顎運動を測定した。また、動物実験用3DマイクロX線CTを用いて、上下顎歯列を含む顎顔面形態の3次元モデルを構築した。次に、顎運動データと形態データを統合することで、マウスの下顎運動を上顎との相対運動として、咬合接触状態を視覚化した。また、顎運動と同期した咀嚼筋筋電図を記録するシステムを用いて、筋活動に対応した下顎の任意点(臼歯、切歯、下顎頭点など)の運動を解析することが可能となった。その結果、マウスの咀嚼運動は開口相、閉口相、咬合相の3相に明確に分けられることがわかった。また、下顎頭の運動軌跡に着目すると、下顎頭の運動軌跡に関して、咀嚼運動時に関節窩に沿って咬合平面に平行で直線的な前方および後方運動を示した。平衡測下顎頭は、開口相において最小開口位から最大開口位まで前方移動した。一方、作業側下顎頭は最小開口位から前方移動した後に、開口相の途中から後方移動に転じた。下顎頭運動に対応した筋活動をみると、開口相後半において、作業側の下顎頭は前方に移動し、平衡側の下顎頭は後方に移動すること、閉口相後半において、平衡側咬筋は活動せず、作業側咬筋が活動することが明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、モーションキャプチャーによる標点計測および動物実験用3DマイクロX線CTを用いた形態計測を行う必要がある。顎運動データと顎骨形態データの統合により上顎骨に対する下顎骨の相対的な運動を再現できるものであるが、動物実験用3DマイクロX線CTに不具合が生じ、形態計測が行えない事態に遭遇したため、研究の進行に遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、マウスの咀嚼筋へBoNT/Aを注入し、機能低下を惹起した咀嚼筋機能低下モデルマウスを対象として、顎運動と同期した咀嚼筋筋活動のデータを取得し、正常マウスと比較しどのような機序によりオーラルフレイルを引き起こしているか検討する。
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Causes of Carryover |
本研究は、動物実験用3DマイクロX線CTを用いて、マウスの顎骨形態データを取得し、モーションキャプチャーによる標点計測と統合することで、顎骨に対する下顎骨の相対的な運動を再現できるものであるが、動物実験用3DマイクロX線CTに不具合が生じるなどしたために、動物実験に必要な経費の執行が行えず、次年度使用額が生じた。 今後の使用計画については、研究の遅れを挽回すべく、実験に必要な物品を購入する予定である。
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