2022 Fiscal Year Research-status Report
神経炎症を介した農薬類の神経毒性機序の解明とmicroRNAバイオマーカーの同定
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22K17342
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
平野 哲史 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (70804590)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経炎症 / ミクログリア / エクソソーム / microRNA / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
ミクログリアの活性化により生じる慢性的な炎症応答、すなわち「神経炎症」はニューロンにおけるシナプス機能不全や異常タンパク質の蓄積を介して多くの神経疾患に共通する潜在的な発症要因として注目を集めている。本研究では環境化学物質が引き起こすグリア-ニューロン間クロストークの撹乱を神経毒性の上流イベントとして捉えることで、化学物質曝露による「神経炎症の惹起」に関する有害影響パスウェイ(AOP)を解明し、新規バイオマーカーの開発に応用することを目指す。 2022年度においては、ミクログリアの活性化等を指標としたin vitroスクリーニング系を新規に構築し、フェニルピラゾール系農薬の1種であるフィプロニル(Fip)が濃度依存的な生存性の低下およびをIL-6発現の上昇を引き起こし、体内主要代謝物であるフィプロニルスルホン(FipS)ではそれらの作用がさらに大きくなることを見出した。さらに、ミクログリアーニューロン共培養モデルを用いた実験から、FipSにより活性化したミクログリアはニューロンへの神経毒性に対して液性因子を介して保護的に働くことが明らかになった。 またミクログリア由来エクソソームを超遠心法により回収し、FipS曝露群のエクソソームをLUHMESに曝露すると対照群と比較して神経突起長が増加することを確認した。ミクログリア由来エクソソームよりmicroRNAを精製し、Small RNA-seqによる網羅的発現解析を行い、FipS曝露群において対照群と比較して2倍以上発現上昇するmicroRNA26種、低下するmicroRNA13種を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、神経炎症の惹起のリスクを有する化学物質(フェニルピラゾール農薬フィプロニルおよびその代謝物他)を新たに同定し、原体と比較して生体内でより長期間残留する代謝物が顕著なミクログリアの活性化を引き起こすことを明らかにすることができた。さらに、化学物質により活性化されたミクログリアから分泌されたエクソソームが神経分化に影響を及ぼす新たなメカニズムの存在を示唆する知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、活性化したミクログリアがニューロンの機能、分化に及ぼす影響とそのメカニズムに関する詳細な解析を行う。さらに、活性化ミクログリア由来エクソソームに特異的なmicroRNAに関する機能解析を行い、動物モデルの結果と合わせて、新規バイオマーカーの絞り込みを行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において、自身や家族の感染等により度々研究の中断が余儀なくされたため
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Research Products
(12 results)