2023 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的素因を考慮した低濃度化学物質のパーキンソン病誘発リスク評価系構築
Project/Area Number |
22K17344
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮良 政嗣 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (60816346)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / 環境要因 / ドパミン神経細胞 / ミトコンドリア / グルコース |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、ヒト中脳由来細胞株LUHMES細胞の培養・分化条件の検討を行った。LUHMES細胞をポリ-L-オルニチン/フィブロネクチンコートディッシュに播種し、増殖培地を用いて培養後、分化誘導培地を用いて分化誘導を行った。分化誘導後7日目において、顕著な神経突起伸長およびドパミン神経細胞マーカーtyrosine hydroxylaseの発現増加が認められたことから、LUHMES細胞の培養・分化条件を決定できたと思われた。96ウェルプレートにおいては細胞の接着が弱く凝集塊を形成するなどの問題が生じたが、コーティング剤をポリ-L-リジン/フィブロネクチンに変更することで改善し、ミトコンドリア神経毒MPP+の曝露条件やsiRNA導入条件を一部検討することができた。しかし、本年度途中から突如細胞が接着しなくなり、あらゆる可能性を検討したものの改善には至らなかった。 そこで、LUHMES細胞の培養条件検討と並行して、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いて「軽度ミトコンドリア障害」と「グルコース利用障害」の両者による特徴的な細胞死のメカニズム解明を進めることにした。低濃度MPP+曝露により軽度ミトコンドリア障害を誘発したところ、細胞死が認められない早期から統合的ストレス応答に関与するeIF2αのリン酸化が認められた。 本研究では、ドパミン神経細胞において特徴的な発現パターンを示す遺伝子を抽出することができた。また、軽度ミトコンドリア障害によるeIF2αのリン酸化がグルコース利用障害に対する脆弱化に関与する可能性が示唆された。今後、LUHMES細胞の培養条件を改善し、「軽度ミトコンドリア障害」または「グルコース利用障害」に対する感受性に関与する遺伝子を特定することで、遺伝的素因を考慮した低濃度化学物質のパーキンソン病誘発リスク評価系構築につなげたい。
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