2022 Fiscal Year Research-status Report
デングウイルスと新型コロナウイルスの重複感染による重症化メカニズムの解析
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22K17349
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
八尋 隆明 大分大学, 医学部, 講師 (60753217)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バングラデシュ / デング出血熱(DHF) / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①バングラデシュで急増するデング出血熱(DHF)の原因メカニズムの解明と②発展途上国で運用可能なマルチ抗原検出イムノクロマトキットの作製による迅速診断システムの開発である。2022年度の①の研究成果として、バングラデシュで急増するデング出血熱(DHF)の現状を把握するために、重要な流行国の情報を収集し、バングラデシュで発生したデング熱ウイルスの疫学データとCOVID-19流行期感染者数について、感染パターンを他の主要流行国と比較した。デング熱の主要流行国では、2020年と比較して、2021年のデング熱感染者は全体的に約36%減少していた。しかし、バングラデシュは、COVID-19パンデミックの2年目(2021年)にデング熱患者数が増加していた。さらに、ラテンアメリカの国々とは対照的に、東南アジアの国々では、デング熱患者数/人口100万人とCOVID-19患者数/人口100万人の間に強い正の相関を確認した。この疫学データ解析について取り纏め、投稿した我々の論文が国際誌に掲載された(Khan S, Akbar SMF, Yahiro T,et al., Int J Environ Res Public Health. 2022, 10768)。 臨床検体の分析については、まず臨床検体を収集するための手続きを実施し、300検体以上の血清サンプルを収集した。その後、DHFとCOVID-19の共感染を確認するために血清学的解析を実施した。DHF患者の約半数以上がSARS CoV-2 抗Nucleocapsid protein IgG抗体の陽性を示したことから、DHFとCOVID-19の共感染者が予想以上に多いことが明らかになった。血清型解析(1-4型)については、RT-pPCRにて解析を進めている。また、デングウイルスの全ゲノム配列解析も順次実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「デングウイルス感染による重症化の分子メカニズムの解析と迅速診断システムの開発」は、大分大学、バングラデシュ、ダッカのBangabandhu Sheikh Mujib Medical University(BSMMU)との共同研究課題として、プロジェクトの永続的アプローチの構築を確立した。バングラデシュでIRB(Institutional Review Board)の許可を得ることができ、血液の採取、血清サンプルの収集は確実に遂行できた。血清が採取された全てのデング熱患者検体(約300検体)において、この研究で重要な臨床プロファイルも入手した。これらの血清の一部(約100検体)は、既に当大学に輸送され解析を進めている。この解析結果をもとに、バングラデシュのデング熱について新しい知見を得ることができた。さらに全ての検体において、データが解析されれば、さらに精度の高い知見となる。 現在のところ、今後予定されている実験も計画通り遂行予定である。しかし、バングラデシュから輸送できていない残りの検体(約200検体)も存在する。この検体の輸送を早期に実施し、全ての検体において解析を遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、バングラデシュで流行したデング熱ウイルス株を次世代シーケンサーにて全ゲノムを解析し、世界の流行株との比較解析を実施する。また、抗体依存性感染増強(ADE)の評価として、デング熱ウイルス を感染させた培養液にSARS-CoV-2抗体を含む血清を添加し、培養上清について成分の比較解析を実施する。 本研究の目的②発展途上国で運用可能なマルチ抗原検出イムノクロマトキットの作製についても、順次準備を進める。万が一、イムノクロマトキット作製過程でモノクローナル抗体の作製ができなかった場合、ポリクローナル抗体の利用を模索する。または、簡易的遺伝子検査の構築についても検討をする。
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Causes of Carryover |
COVID-19の流行により、海外発注分の試薬について、予定納入日の遅延が生じた。納入期日まで物品の納入が不可能であることが判明した為、10万円を次年度に繰り越した。次年度の交付が決定したら、予定通り物品の発注を行う。
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