2023 Fiscal Year Research-status Report
Occupational disparities in survival from cancer and non-communicable diseases
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22K17401
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
財津 將嘉 産業医科大学, 高年齢労働者産業保健研究センター, 教授 (10372377)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | がん / 職業格差 / 病理組織 / 労働災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
命の格差の解消のため、がん及び周辺疾患の死亡の職業格差の解明が求められている。本研究は、日本でがん及び周辺疾患による死亡の社会格差を示し、さらに職業間で異なる免疫応答や病理組織に、職業曝露が関連する身体活動、少量飲酒や加熱式タバコなどの生活習慣の媒介を組み込んだ社会格差モデルを開発し、命の格差の解消に向けた政策への貢献を目指している。腎細胞がん病理組織を職業により比較したところ、high-grade腎細胞がんの割合は、manual職種の方がnon-manual職種と比べて高かった: 23.0% vs. 10.9%。また、免疫応答の経路に関して、low-grade腎細胞がんに限定してhigh mobility group box 1(HMGB1)陽性率に注目し分析したところ、細胞質HMGB1陽性率はmanual職種の方がnon-manual職種と比べて高かった: 71.4% vs. 38.3%。また、周辺疾患として労働災害に注目し、公開されている労働者死傷病報告データおよび労働力調査基本集計を用いて2013年から2019年の休業4日以上の労働災害の年齢調整発生率を推計すると、死亡災害は年5%の減少が見られたが、全労働災害には有意な傾向はみられなかった。また、保健衛生業では全労働災害の年齢調整発生率に年2%の増加が観察された。神奈川県地域がん登録で、労働者世代のがんに注目して、20歳から59歳まで初発がん患者16809名の5年全死亡率を追跡したところ、upper non-manual職種と比べてmanual職種の方が死亡率比1.26倍と高く、初発ステージによる職業格差の影響が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、がん及び周辺疾患による死亡の職業格差を解明するため、職業間で異なる免疫応答や病理組織に、職業曝露が関連する身体活動、生活習慣を組み込んだ精緻な社会格差モデルを開発し、命の格差の解消に向けた政策への貢献を目指している。病院患者データや既存統計データ、癌登録データ、国内多施設大規模コホートを用いて、日本におけるがん予後と病理組織に職業格差が存在することを明らかにした。また、この知見をもとに細胞レベルの免疫応答の経路によるがんリスクの職業格差について検証を行い、腎細胞がん患者のHMGB1陽性率の職業間の差を明らかにした。これらの内容に関して、国内・海外研究協力者との打ち合わせおよび結果報告、学会発表、論文発表を行った。労働災害のデータについては2024年の国際学会で発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
社会階層別で死亡リスクが異なるかどうかをがん及び周辺疾患の個別の死因で検証し、身体活動・飲酒など生活習慣がどのように影響しているのかを明らかにする。また、引き続き病院患者における慢性炎症・ストレスバイオマーカーの職業間の差を明らかにする。さらには労働者の周辺疾患として転倒災害が非常に多いことが判明したため、インターネット調査の手法であるデジタル技術を用いて労働者コホートを調査し、職業歴の健康影響への関連を明らかにする。また、業種としては保健衛生業領域の身体活動なども注目すべき分野であることも明らかになっているため、IT技術を用いたデータ計測を試みる。これらの得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進み、労働災害関連の研究成果を優先したため、当初予定していた病理組織データ収集の旅費との差額が発生した。次年度は、病院患者の病理組織のデータ収集・免疫染色データの評価を行い、職業が生活習慣リスクや免疫応答を通じて、がん及び周辺疾患の重症度や悪性度・予後の職業格差に影響を与えているかを明らかにする。また、IT技術を用いた身体活動データを収集し、健康影響への関連を明らかにする予定である。これらの研究についての打ち合わせおよび報告の旅費に使用する。
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