2022 Fiscal Year Research-status Report
法医鑑定の発展に資する新規受傷時期推定マーカーの探索
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22K17415
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
村瀬 壮彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40823315)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 受傷時期推定 / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去にマウス受傷皮膚を検体として行ったプロテオーム解析によって得られた経時的な受傷皮膚タンパク質発現プロファイルから、受傷後の変動が大きいタンパク質を検討候補としていくつか選定し、ウエスタンブロット(WB)によって評価を行った。具体的には、Carnexin及びCalreticulinという2つのタンパク質について検討を行った。これらのタンパク質はどちらも細胞内で合成されたタンパク質の品質管理に関わっており、損傷治癒が進行し、様々なタンパク質合成が増加するにつれてその発現も増加するものと考えられ、過去のプロテオーム解析においてはどちらも受傷後3日及び5日にコントロール(受傷直後)と比較して3から5倍程度の発現増加が認められていた。WBによる評価では同様の結果が得られると考えていたが、Carnexinに関しては受傷後0.5から9日の経過において明らかな有意差は認められなかった(N=4)。Calreticulinに関しては、受傷後9日においてのみ有意差が認められ、約3倍の増加であった(N=4)。上記の結果を鑑みると、これら2つのタンパク質に受傷時期推定マーカーとしての有用性があるとは評価できず、マウスの受傷皮膚組織を用いた組織学的な検討までは進められていない。 現在はマーカー候補として新たに複数のApolipoprotein及びその関連分子に着目し、real time-PCRによるmRNA発現、WBによるタンパク質発現といった生化学的検討を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究予定であれば、マーカー候補としたCarnexin及びCalreticulinに対してマウス損傷皮膚組織を用いた組織学的な発現確認や、ヒト損傷皮膚組織を用いた有用性検討に入っている段階であるが、マウス損傷皮膚を用いたウエスタンブロットによるタンパク質発現評価の段階において着目した2つのタンパク質は受傷時期推定マーカーとして有用でない可能性が考えられたため、さらなる検討を進められていない。 現在は異なるマーカー候補を選定し、再度それらの有用性評価を進めている。具体的には、同様に過去のプロテオーム解析で変動のあった複数のApolipoprotein及びその関連分子に着目しているが、Carnexin・Calreticulinの発現動態が想定したものと異なったことから、Apolipoproteinに関してはreal time-qPCR法によるmRNA発現動態の段階から確認を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はApolipoproteinの発現動態の評価をmRNA・タンパク質の両面から進めていく予定である。複数のApolipoproteinにおいて、その発現動態に時期特異性があり、かつ発現量が十分なものを見出した場合、組織学的な評価を行っていく。もしこれらのタンパク質が受傷時期推定マーカーとして有用でない可能性が示された場合、順次他のマーカー候補について検討を行う予定である。
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