2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K17552
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
多田 葉子 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (70458107)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 舌苔除去 / 微小出血 / 潜血反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
要介護高齢者の口腔ケアを行う場合、歯だけでなく口腔粘膜もケアする。舌粘膜は歯や皮膚に比べて機械的刺激に弱く、容易に傷つき出血すると考えられる。しかし、微小出血を指標とした舌清掃方法の評価は行われていない。そこで本研究では、舌苔除去を行う際の舌粘膜の微小出血を評価する方法について検討した。要介護高齢者で調査するにあたり、その予備研究として健康成人で舌粘膜の清掃方法を検討した。 微小出血の判定には、尿検査用試験紙ウロペーパーⅢ(栄研)を用いた。90分の絶飲食を行ったのち、舌粘膜を歯ブラシおよび舌ブラシで擦過し、スポンジブラシで採取後、水で懸濁したものを測定試料とした。検査紙に測定試料をつけ、色調の変化で微小出血を判定した。擦過圧は100gとし、歯ブラシで3回擦過群、10回擦過群および舌ブラシで10回擦過群、30回擦過群の4群で検討を行った。 対象者は43歳~53歳、女性5名であった(平均年齢49.6±4.2歳)。歯ブラシで3回擦過群では、11症例中2症例(18.2%)に微小出血がみられた。歯ブラシで10回擦過群では、7症例中全例で微小出血がみられた。一方、舌ブラシで10回擦過群のおよび30回擦過群では、全例で微小出血がみられなかった。以上のように、歯ブラシでの擦過で微小出血がみられ、舌ブラシでの擦過で微小出血がみられなかった。今回健康成人を対象に調査したにもかかわらず、歯ブラシでの擦過で出血がみられたため、健康成人より口腔粘膜が脆弱な要介護高齢者に対して舌粘膜ケアを行うときに、歯ブラシの使用は好ましくないことが示唆された。舌ブラシで擦過すると微小出血がみられなかったことから、要介護高齢者に対しても使用できる可能性があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度は、ヘモグロビン検出用キットペリオスクリーン「サンスター」を用いて舌粘膜ケア時の微小出血の評価方法について検討を行った。ペリオスクリーンは唾液中のヘモグロビンを検出する試薬であり、舌粘膜擦過による微小出血の評価に用いていたが、製造元の事情により2023年3月で販売終了することが決定した。そのため、微小出血を評価する代替品の検討を新たに行う必要があった。検討の結果、代替品として尿検査用試験紙ウロペーパーが使用できることが分かったが、本来は尿中の潜血反応測定に使用するものであるため、舌上の測定試料の採取方法および測定方法についても改めて検討する必要があった。これにより、健康高齢者に対して行う予定であった、歯ブラシ・舌ブラシ・スポンジブラシ等の舌粘膜清掃器具を用いた舌粘膜の擦過圧、擦過回数の検討を行う段階に到達できず、進捗状況をやや遅れているとした。 健康成人に対して舌粘膜清掃を行い、尿検査用試験紙ウロペーパーを用いて微小出血を評価したところ、歯ブラシでの擦過で微小出血がみられ、舌ブラシでの擦過で微小出血がみられないことが分かった。健康成人を対象に調査したにもかかわらず、歯ブラシでの擦過で微小出血がみられたため、健康成人より口腔粘膜が脆弱な要介護高齢者に対して舌粘膜ケアを行うときに、歯ブラシの使用は好ましくないことが示唆された。舌ブラシで擦過すると微小出血がみられなかったことから、要介護高齢者に対しても使用できる可能性があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により、尿検査用試験紙ウロペーパーⅢ(栄研)が舌清掃後の微小出血を評価する代替品として利用可能であることが分かった。また、測定試料の採取方法および評価方法に関する新たな見通しが立った。 今後の研究では、要介護高齢者に対して舌粘膜清掃を行う際、具体的な舌清掃器具や使用方法について、様々な観点から検証を行っていく予定である。歯ブラシ・舌ブラシ・スポンジブラシ等の舌粘膜清掃器具を用いて、擦過圧および擦過回数を変えて微小出血の評価を行い、微小出血を生じない限度について検討を行う。この研究により、要介護高齢者の口腔ケアにおいて、より効果的で安全な舌粘膜ケアを提供することができ、標準的なケア指針の確立に向けた重要な結果を得られると考える。
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Causes of Carryover |
参加学会がWEB開催となり、当初予定していた旅費がかからなかったため次年度使用額が生じた。今後は学会参加も対面開催となり、燃料費高騰の影響で交通費が予定より高くなることが予想される。
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