2022 Fiscal Year Research-status Report
運動療法と栄養療法の相乗効果による重症大動脈弁狭窄症患者の予後改善への挑戦
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22K17588
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
矢野 雄大 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (10771389)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | TAVI / 低負荷運動療法 / 栄養状態 / 大動脈弁狭窄症 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、重症大動脈弁狭窄症(AS)患者を対象に、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)前後の低負荷運動療法の介入が身体機能の推移に及ぼす影響を、低栄養の有無で効果が異なるかを含め検証を行った。 対象は2020年4月1日から2022年12月31日の間に当院でTAVIを施行したAS患者とした。方法は単施設の後方視的観察研究であり、診療録より必要な情報を収集した。主要アウトカムはTAVI前後のShort Physical Performance Battery(SPPB)とした。栄養状態としてGNRIを用いて92以下を低栄養と定義した。統計解析についてはデータの正規性に基づきWilcoxsonの符号付順位検定、加えてカイ二乗検定を行った。 解析対象者は67名(85±4歳, 女性45名)であった。TAVI前後のSPPB合計点は9(7-11)点→10(7-12)点で、統計的に有意ではないが改善傾向を認め、特にSPPBの下位項目の5回椅子起立については11(9-13)秒→10(8-12)秒と有意な改善を認めた。全対象者の内、TAVI前後でSPPBスコアが維持・改善した者の割合は75%であった。一方で、GNRI≦92の低栄養群で70%の者でSPPBの維持・改善が確認され、低栄養の有無でSPPBの変化の割合に有意差を認めなかった。なお、TAVI前の低負荷運動療法において、介入の中止に至るような有害事象の発生は0件であった。 運動療法が禁忌とされる重症AS患者において、リスク管理を適切に行いTAVI前から積極的に低負荷運動療法を行うことで、低栄養の有無に関わらず一定の身体機能改善の効果が期待できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の第一段階の検討であり、該当年度に予定していた低負荷運動療法の安全性の検討を、栄養状態も含め検証を行い、予測された通り安全性が確認されたことから上記進捗状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究課題の根幹である栄養面への介入研究へと進めていく。具体的には術前後の低負荷運動療法に加えて、栄養補助食品の摂取の有無を加えることでAS患者の身体機能などのパラメーターの推移に影響を及ぼすかを検証していく。次年度に行うこととしては、院内の倫理委員会への申請を行い、データ収集の開始へと進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度には体成分分析装置を2台購入予定であったが、本格的なデータ収集の開始前であり現時点では1台の購入で充足できているため、この点で次年度使用額が生じた。また等尺性筋力測定装置についても2台購入予定であったが、データ収集開始前であり、研究実施施設の既存の機器で充足できているため未購入となっており、次年度使用額が生じた。次年度については、当該年度に購入予定であった機器の購入を行う。また情報収集や成果発表のため、学術大会への参加も継続していく。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] ドブタミン注射薬の持続投与を継続したまま在宅医療へ移行した終末期心不全の1例2022
Author(s)
赤松隼人, 江藤良, 黒部昌也, 山口ゆかり, 馬場妙子, 桑原薫, 矢野雄大, 井川幸子, 中野国枝, 中川博雄, 兒玉幸修
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Journal Title
日本病院薬剤師会雑誌
Volume: 58(1)
Pages: 67-72
Peer Reviewed / Open Access
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