2022 Fiscal Year Research-status Report
脳波による認知症発症前の症状ステージ判別指標の解明
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22K17604
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
片山 脩 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 老年学・社会科学研究センター, 外来研究員 (60845999)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳波 / 事象関連電位 / 主観的記憶障害 / 軽度認知障害 / 主観的認知機能低下 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では脳波事象関連電位を用いた神経生理学的側面から正常な認知機能、主観的記憶障害(Subjective memory impairment; SMI)、主観的認知機能低下(Subjective cognitive decline; SCD)、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment; MCI)の類似点、相違点を明らかにして、認知症発症前の症状ステージを判別する簡便なスクリーニングツール開発の基礎となる脳波事象関連電位を明らかにすることを目的とする。縦断研究から、SMI、SCD、MCIが認知症の予測因子になり得ることが明らかにされている。認知症対策には早期発見が重要とされており、認知症の前段階に位置づけられるSMI、SCD、MCIに着目する必要がある。しかしながら、それらの症状ステージを判別する安価で簡便なスクリーニングツールは明らかとなっていない。本研究では、1)高齢者機能健診にて問診と認知機能検査を実施し、2)脳波事象関連電位を測定して、3)問診と認知機能検査、脳波事象関連電位の結果から、SMI、SCD、MCIの類似点、相違点を明らかにすることで、認知症発症前の症状ステージを判別する簡便なスクリーニングツール開発の基礎となる脳波事象関連電位を明らかにする。 令和4年度は高齢者機能健診にて問診と認知機能検査を実施し、脳波事象関連電位を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、自治体との定期的な会議に参加し、打ち合わせを綿密に行った。また、認知機能調査に向けて、SMIやSCDの問診、MCI判定のための客観的認知機能検査を実施するスタッフを養成するスタッフ募集から検査内容に関する研修会を実施した。脳波(EEG)測定課題の作成のため心理実験を作成することのできるソフトウェアPsychoPy(Peirce JW, et al., 2019)を用いてEEG測定課題を作成した。 高齢者機能健診を実施して、主観的および客観的認知機能の検査を実施し、作成したEEG測定課題にて所属機関が保有する脳波計(Quick-20, CGX, San Diego, USA)を用いて事象関連電位(ERP)の測定を開始した。高齢者機能健診に参加した地域在住高齢者から脳波測定の同意が得られた約900名を対象に実施が終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、EEG測定課題の行動学的指標である刺激提示からの反応時間、正答率、神経生理学的指標としてEEGのERPを刺激提示の-100msから1000msまでを解析区間に設定してデータのクリーニングを行う。 次に認知機能の検査結果とEEGで測定したERPの結果から、SMI、SCD、MCIの類似点、相違点を明らかにする。具体的には、問診と認知機能検査の結果から、正常な認知機能、SMIあるいはSCD、MCIの判定を行う。ERPは各波形成分の振幅と潜時を算出する。刺激提示を0msとし後期陽性複合(LPC)が含まれる1000msまでのERP成分をmicrostate segmentation解析を用いて活動した脳領域の時系列変化を明らかにする。さらにLORETA解析を用いて活動した脳領域を三次元的に描画する。 最後に認知機能の検査結果とEEGで測定したERPの解析結果から、SMI、SCD、MCIの類似点、相違点を明らかにする。最終的に認知症予防に向けた早期発見につながるスクリーニングツールの開発に寄与する神経生理学的知見を得る。
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Causes of Carryover |
コロナ禍ということもあり自治体との打ち合わせや研究に関する相談をWeb会議で実施する機会が増えたことなどもあり次年度使用額が生じた。次年度は国際学会での発表を予定しており旅費等への使用を計画している。
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