2022 Fiscal Year Research-status Report
局所的な温冷交代刺激による筋疲労改善メカニズムの検証
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22K17616
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
澤田 智紀 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (70867697)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 温冷交代刺激 / 筋疲労 / 筋硬度 / 筋血流量 / 近赤外線分光法 / 自律神経活動 / 心拍変動 / 筋緊張 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度では、健常若年者を対象に疲労した僧帽筋に対して温冷交代刺激を与え、筋組織内の血流動態ならびに自律神経活動に及ぼす影響を検証した。 交代刺激は交代浴で広く用いられているプロトコルを参考に、温刺激3分冷刺激1分を5セット繰り返す条件とし、僧帽筋上部線維上にデバイスを設置して刺激を与えた。また、交代刺激条件に対する比較条件として、当該デバイスを用いた温熱単一刺激、冷却単一刺激、刺激なしの3条件を実施し、これらの条件との相違を併せて検証した。 実験手順として、刺激介入に先立ち僧帽筋を疲労させるために、ノートPCによるタイピング課題を実施した。その後、僧帽筋の筋硬度、近赤外線分光法を用いた僧帽筋組織内の酸素化指標を含む血流動態、心拍変動解析を用いた自律神経活動をモニタリングし、刺激介入の前後でこれらのパラメータを比較した。 その結果、温冷交代刺激条件では介入後に筋硬度が有意に低下すること、筋組織内の酸素化ヘモグロビン濃度変化量の上昇に伴い、総ヘモグロビン濃度変化量が増大すること、副交感神経活動の指標であるHFが低下し、交感神経活動の指標であるLF/HFが増大することが明らかとなった。 近赤外線分光法を用いた筋組織血流動態に関する結果は第33回日本運動器科学会、心拍変動解析を用いた自律神経活動に関する結果は第49回日本バイオメカニクス学会へそれぞれ演題登録・採択され、報告した。また、これらのパラメータの関連性に関して、追加でデータ計測・解析を行い、当該結果に関しては国際学術誌へ投稿する段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度では、疲労した僧帽筋に対する局所的な温冷交代刺激が筋組織血流動態ならびに自律神経活動に及ぼす影響を検証することを目的として、新たに18名の健常若年者のデータ計測を行った。その結果、他の条件と比較して温冷交代刺激の有効性を示す知見を得ることができた。したがって、当初の計画通り、今年度から刺激部位を下腿三頭筋に変更し、筋緊張評価としてH反射検査を加え、温冷交代刺激が中枢性の筋緊張調節機構に及ぼす影響を検証する研究をスタートできる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
温冷交代刺激が疲労した筋に対して中枢性の筋緊張調節機構に及ぼす影響を検証する研究を開始する。研究計画は既に倫理委員会に提出・承認済みであり、直ちに研究を開始できる準備を整えている。研究対象は健常若年者とし、令和5年度中に20名程度のデータを収集する予定である。刺激介入に先立ち、下腿三頭筋を疲労させるために、片脚立位での踵上げ運動を実施する。疲労課題実施後、温冷交代刺激を疲労した下腿三頭筋に実施し,介入の前後で筋硬度の変化とH反射の変化の関連を比較検証する。 H反射検査に必要な機器一式は令和4年度の時点で購入し、予備実験を実施している。ヒラメ筋を被験筋とし、膝窩部より脛骨神経に対して経皮的電気刺激を行い、H波およびM波を導出する。H波およびM波の最大振幅からHmax/Mmax比を算出し、電気生理学的な筋緊張の指標とする。
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Causes of Carryover |
今年度中に投稿予定だった論文の結果の解釈、まとめに時間を要し投稿が遅れた。次年度使用はその論文の英文校正費であり、次年度使用する予定である。
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Research Products
(2 results)