2022 Fiscal Year Research-status Report
カナダにおける移民のアウトドア実践に関する社会学的研究
Project/Area Number |
22K17670
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鷲谷 洋輔 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (60786276)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | エスノグラフィー / アウトドア / 自然 / プロセス社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アウトドア活動をはじめとする自然における身体活動を、特に移民を対象に検証する社会学的試みです。これまでにない<都市vs.非都市(自然)>という構図を導きの糸とすることで、都市化やそれと極めて親和性の高いスポーツ化が進む現状に対して、別の視座からの社会学的知見を提起することを目標としています。初年度である2022年度は、主に先行研究の整理とフィールド調査を計画していました。 【先行研究の検討】T.Ingoldのenskilmentに関する論考だけでなく、スポーツ社会学領域でなされてきたアウトドアスポーツ論や自然保護活動に関する昨今の研究事例を検証しました。さらに、日本国内の事例を含めた先行研究の精査に取り組みました。 【フィールド調査】8月にカナダ・トロントにて、主に聞き取りと非調査対象の選定を行いました。これはプレ調査として位置付けられるもので、潜在的な調査対象者10名ほどに聞き取りを行いました。一方で、新型ウィルスによるさまざまな制約を受けており、具体的な調査対象や事例の決定には至っていません。対面での聞き取りが叶わなかったケースも複数あり、次年度以降に持ち越されました。当初予定していた第二回のフィールド調査も、新型ウィルスの問題から次年度以降に持ち越しとなりました。 【学会発表】新型ウィルスの問題等から、北米スポーツ社会学会での発表は実現しませんでした。これに代わって、英国Durham大学におけるセミナーにて研究発表と研究会を行いました。ここでは特に、スポーツ社会学、N.Eliasの研究で高名なRoderick教授との議論を通じ、研究にEliasの論考を含めていく可能性を示唆されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型ウィルスの影響を受け、当初の研究計画を踏まえたフィールド調査や、同テーマに即した事例の選定まで至っていません。一方で、国内の先行事例研究や社会学の潮流を検討することを通じて、本研究では国内事例を併行して検討対象と扱うことを検討しています。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、8月に改めてフィールド調査を行い、研究事例の決定と聞き取りへと順次進行することを目指します。また、可能な限り事前にオンライン等での聞き取り等をすすめることで、現地での時間の調整を試みます。 第二に、調査のテーマを「移民」に限らず、「越境者」へとその射程を広げます。このことは、調査事例や対象候補の選定をより柔軟にするとともに、国境をベースにした移民論からより多角的なアプローチが取りえる越境者の視点を喚起する、新たな展開につながるものです。 第三に、カナダでの事例研究と並行して国内での事例研究を検討します。新型ウィルスの問題、さらにはカナダ国内でのストライキ増加など、当初見込めなかった支障も考えられることがその一因です。さらに、先行研究の検討から、自然、身体実践というキーワードに関する(スポーツ)社会学でのこれまでの研究においては、日本国内の事例を国外に提示する学術的インパクトが考えれられるようになりました。これは上述の第二の点とも重なるところですが、本研究を発展的に展開していくことを企図して取り組みたいと考えます。
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