2022 Fiscal Year Research-status Report
人・モノ・環境から生まれる武術実践に関するスポーツ人類学的研究
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22K17672
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田邊 元 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 講師 (40758588)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 沖縄空手 / 文化資源 / 武術的身体表現 / 武術の民族誌 / 芸能武術 / スポーツ人類学 / 百足獅子 / 地域コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 実施した研究の概要 当該年度においては、(1)沖縄空手の現地調査(2022年5月、10月、11月)、(2)沖縄県八重瀬町で実践される民俗武術の現地調査(10月、11月)、(3)富山県南砺市井波地区の獅子舞の現地調査をそれぞれ実施した。(1)では、沖縄空手の県内での実施状況として、うるま市において実施される闘牛大会での演武実践の観察と、2016年以降に『沖縄タイムス』紙上で連載される「週刊沖縄空手」の記事収集を行った。(2)では、八重瀬町で実施される「YAESE結フェスタ2022」の参与観察と、関係者への聞取りを行った。(3)では、南砺市にて実践される獅子舞や祭礼関係者への聞取りを実施した。 2. 研究の成果 (1)と(2)の調査から、沖縄県下において多様に展開される武術の様子が明らかとなった。近年、県を挙げて文化遺産化が進む沖縄空手は、沖縄県下で行われる様々なイベントにおいてその演武が行われている。そういった機会の多さは、戦略的にも沖縄の人びとと空手を結びつけるような動きへとつながるように展開される。一方で、沖縄県下には民俗として棒などを主体とした武器術も多く伝承され、それらは各地域社会の祭礼において実践されている。こういった武術と接する機会の多さは、日本における他地域では見られない点であり、そのことが県を挙げた沖縄空手の文化資源化の動きにも連動している様子が見られ、相互に影響している。(3)では、「担い手不足」と呼ばれる現象に対して、各伝承団体がどういった対応をしているのか、具体的な方法が明らかになった。特に「よそ者」の受入れ方や人の貸し借りについては団体ごとに様々に工夫を凝らしている様子が明らかになった。本年度の調査からは、武術とみなせるような実践が相互に影響し、かつ様々な人びとがそこに関わり実践される状況が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、当初予定していた調査対象の一部に変更が必要となり基礎的な調査から始める必要が生じたため、その成果の学会誌への投稿等の作業が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような遅れが生じているものの、調査自体は順調に進行している。新型コロナウイルス感染症の影響も減少していることからも、本年度は引き続き(1)~(3)の対象について調査を実施し、本年度内に出来るだけ早く成果をまとめ、多元的に展開される武術の実態を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
今年度については新型コロナウイルスの影響があり、一部の祭礼はその実践を見送る場合もあったために、一部を次年度に繰り越さざるを得なくなった。 繰越した予算については,次年度の旅費(国内調査)と資料購入費に当てる。
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