2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K17681
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
山田 雅敏 常葉大学, 経営学部, 准教授 (80571546)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 技 / スキル / 無我 / 言語使用 / 主客未分化 / 純粋経験 / 無人称的身体論 / 呼吸 |
Outline of Annual Research Achievements |
技を上手く実践するためには,状況を正しく判断し,素早く動くことが大切となる.ここで古来,達人や賢人の多くが技に思考や言語が介在すると,一瞬の迷いや遅れを生じさせる場合があるため,座禅や瞑想による自己観察の重要性や,技を実践する際の言語使用に注意するよう諭してきた. そこで本年度の主な研究実績として言語使用に注目し,動作中の認知的な発話行為による知覚対象の弁別が身体動作に与える影響について実証的に検討することを目的とした.方法として,ある知覚の刺激には指定の発話を行いながら反応し,他の刺激には反応を要求しないGo/No-go課題の知覚反応テストを開発・実施した.本実験の知覚反応テストは,画面上に赤円と青円のどちらかがランダムに表示され(出現確率は赤円・青円ともに50%),赤円が表示されている1秒間にスペースキーを押した場合にTrueが自動的に記録される.対して,赤円が表示されている間にスペースキーを押さなかった場合,または青円が表示されている間にスペースキーを押下するとFalseが記録されるようにプログラムを設計した.くわえて,生理学的指標から被験者の認知情報処理を明らかにするために,短期記憶や意思決定,思考,注意,行動の抑制など人間的な高次機能を司る前頭前野の脳活動を計測した. 結果の分析から,認知的な発話行為を通して知覚対象を弁別することにより,身体動作の反応時間が遅くなることが明らかとなり,また前頭前野の活動が低くなる傾向が認められた.考察から,認知的発話行為による知覚対象の弁別が認知的リソースの負荷となる可能性が示唆され,技を実践する際の言語使用が動作の反応に影響を及ぼすことが示された.今後の展開として,実験後に収集した運動感覚的印象のリフレクションと反応時間,および脳活動との関連について検証することを予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的を遂行するための知覚反応テストの開発,および実証実験を実施し,研究成果を発表したことから「おおむね順調に進展している」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
知覚反応テストの実験後に収集した運動感覚的印象のリフレクションと反応時間,ならびに脳活動との関連について検証することを計画している.また,呼吸を意識して禅的実践を行なう際の知覚反応と脳活動についても実証的に検証することを予定している.
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Causes of Carryover |
当初,予定していた学会について,一部オンライン参加となったため,交通費・宿泊費の支出が減額されたため,予算の一部が余る状況が生じた.次年度の使用計画として,知覚反応テスト用の機器購入や,学会の発表費・参加費などに使用する予定である.
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