2022 Fiscal Year Research-status Report
SSCを用いた運動制御について:前腕屈筋における腱動態特性の解明
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22K17683
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小澤 悠 東海大学, スポーツ医科学研究所, 研究員 (10881344)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腱動態 / 超音波Bモード法 / 伸張短縮サイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
「本研究の目的」本研究においては、これまで着目されてこなかった前腕部や上腕部の伸張短縮サイクル(SSC)に着目する。これまで腱の弾性については、アキレス腱や大腿直筋の腱など、太く大きい腱において多く研究されてきた。上肢筋群の付着腱は下肢の腱などに比べると細く短いため、その弾性によって蓄えられる力も小さくなることが考えられる。さまざまな動作中における上肢筋群の腱動態を測定し、比較、検討することで、上肢筋群における腱の動態特性を明らかにする。特に、実際のスポーツ動作における腱動態の測定は下肢筋などの部位においてもあまり見られず、細かい力の調整が求められる動作における腱動態の解析は運動制御の面からも有益なデータとなる。 「研究の進捗状況」初年度である本年度は前腕(橈側手根屈筋)の腱動態の測定を行った。しかし、前腕の筋は極めて細く、収縮することで超音波プローブを当てている面から腱がズレてしまい、計測が困難であった。また、その移動量はプローブ位置を変化させなければ追従できないことが明らかになった。本研究では、高度な運動制御が必要とされる筋の腱動態を明らかにすることを目的としているため、被験筋を上腕三頭筋として測定を継続している。スポーツ整形外科の医師とともに予備実験を重ね、上腕三頭筋の遠位に付着する腱動態の正確な取得に成功した。その結果、筋収縮により腱の緩みがなくなり腱長が伸びる現象が見られたが、収縮強度の違いによる腱の伸張量の変化は見られなかった。この結果を第5回身体科学研究会にて発表をした。また、令和5年度に行われるよこはまスポーツ整形外科フォーラムにて口頭発表することが決まっている。上腕三頭筋の腱は3cm程度と短く、アキレス腱などの長い腱と違って一つの超音波プローブによって骨との付着部位から筋への移行部を捉えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況 現在、上腕三頭筋の腱動態を正確に測定することに成功しており、5名のデータを取得した。当初目的では前腕筋の腱動態を取得することであったが、前腕筋の腱動態を測定することは現在所属研究室で所有している機器で測定することが困難であることが明らかになった。そこで被験筋を上腕三頭筋とした。上腕三頭筋長頭の神経支配比はおよそ100(本/Motor Neuron: MN)であり、腱動態の測定で多く用いられる腓腹筋の神経支配比はおよそ1700である。ここからも上腕三頭筋は十分に細かい力の調整が必要とされる筋であると言える。 筋収縮がほとんどなく、関節トルクが発生していない状態での腱の緩みが観察された。一方で、筋収縮強度の違いによる腱長変化の違いは見られなかった。現在は緩やかに筋を収縮させる試技を対象に腱動態を測定している。今後、収縮速度を変化させたり、関節角度を変化させることで、これらの腱動態の変化に違いが現れると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに実験プロトコルは確立しているため、今後はまず、被験者を増やし、詳細な分析(腱の伸張速度など)を行う。2023年度には、収縮速度や収縮強度、肘関節角度を変化させた際の腱動態を観察し、更なる腱動態特性の解明を行っていく。特に、収縮速度においては、腱に対して一時的に大きな力がかかる。また、実際のスポーツ動作やSSCが活用される様な状況では、極めて短時間に大きな力が腱や筋にかかる。このような状況を上腕三頭筋において再現させることで、実際のスポーツ動作に近い筋活動と腱動態を測定することができる。
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Causes of Carryover |
2022年度は以前として、新型コロナウイルスのパンデミックが終息を見せず、夏に計画していた学会参加を見送ったため多額の繰越が発生した。さらに、前腕筋の腱動態を測定が困難であったため、被験筋の選定や対象試技などの実験条件の調整に多くの時間を費やした。そのため、応用的な実験にて使用するために購入予定であった機器の購入が遅れた。 研究はすでに軌道に乗っており、実験も順調に進んでいる。そのため、2023年度には、関節トルク計や超音波プローブ、小型センサといった機器の購入を予定している。また、すでに学会参加登録も済ませており、計画通り、研究を勧められる見通しである。
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Research Products
(2 results)