2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K17684
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
内田 昌孝 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (40779063)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腸内環境 / トレーナビリティー / 骨格筋 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、腸内細菌叢が生体機能の適応に関連することが報告されている。一方で、運動トレーニングはその様式によって目的とするパフォーマンスを向上させるトレーニングの種類は異なる。運動トレーニングによる生体の適応メカニズムは様々な検討がなされているものの、腸内細菌叢との関連性を検討した研究は少ない。そこで、本研究では、除菌実験動物を用いて、運動トレーニング効果と腸内細菌叢の関連性を明らかにする。さらに、運動トレーニングを行ったマウスの腸内細菌叢を他の個体に便移植することで、腸内細菌叢が運動トレーニングの効果に直接貢献する可能性も検討する。すなわち、腸内細菌叢を介した運動トレーニングのパフォーマンス向上効果の可能性について明らかにする。 実験動物はマウスを用いた。マウスは安静群、運動トレーニング群、除菌+運動トレーニング群に分けた。運動トレーニングは有酸素性運動トレーニングを実施した。除菌マウスは、抗生剤をトレーニング介入期間中に投与した。有酸素性運動能力および骨格筋代謝活性の測定を行った。さらに、マウス糞便を用いて、腸内細菌叢の次世代シーケンス解析を行った。その結果、有酸素性運動能力の指標である運動耐用能は、運動トレーニング群において有意な増加を示したが、除菌+運動トレーニング群において、有意な増加は観察されなかった。骨格筋代謝の指標であるクエン酸合成酵素活性も同様の傾向を示した。さらに、運動トレーニングや除菌処理の腸内細菌叢の構成の違いを検討した結果、有意に異なる腸内細菌叢の構成を獲得することが明らかとなった。また、特定の腸内細菌種と有酸素性運動能力の間に有意な正の相関関係があることが示された。 現在、便移植実験の解析を行っており、論文化に向けデータの取得並びに執筆を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗生剤処理を行ったマウスを用いた、運動トレーニング効果と腸内細菌叢の関連性を明らかにする実験は実施済みである。また、腸内細菌叢が運動トレーニングの効果に直接貢献することを検討するために便移植実験を実施し、現在、骨格筋の代謝活性などを測定中である。本年度内の論文化を目指していたものの、追加実験や腸内細菌叢のより詳細な解析が必要となり、本年度内の論文化が遅れている。現在までに追加実験の実施や腸内細菌叢の解析は終了しており、次年度での論文化を目指す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
便移植移植実験は実施を終了しており、有酸素性運動能力に対する腸内細菌叢の影響は明らかになりつつあるものの、そのメカニズムが抗生剤投与実験と同様のメカニズムであるか否かは明らかではない。このため、骨格筋内の代謝活性因子の解析を推進し、運動トレーニングを行ったマウスの腸内細菌叢を移植するだけで運動トレーニングを行った際と同様のメカニズムで有酸素性運動能力を向上させるか否かを検討する。 さらに、運動トレーニングによる骨格筋内の代謝活性因子の向上は観察されたもののそのメカニズムは明らかではないため、運動トレーニングによる骨格筋内の代謝活性向上を制御する上流因子の解明を行い、研究の高度化を推進する予定である。 先行研究において、腸内細菌叢が産生する代謝産物が、骨格筋内の代謝活性因子を増加させることが報告されている。すなわち、腸内細菌由来の代謝産物が骨格筋内の代謝を変化させ、これが運動トレーニングによるパフォーマンス向上のメカニズムに関連する可能性が考えられる。実際に、抗生剤投与実験において、特定の腸内細菌種と有酸素性運動能力の間に関連性があることを明らかにし、これらの腸内細菌種が生体機能を制御する代謝産物を複数産生することが明らかにされている。このため、本研究において、血液中の腸内細菌叢由来の代謝産物と有酸素性運動能力の向上との関連性を検討することで、腸―筋連関の詳細なメカニズムの検討も行う予定である。 このように、次年度以降は運動トレーニングによる生体内の適応メカニズムを詳細に解析するとともに、腸内細菌叢との関連性を検討することで、腸―筋連関の関係を検討する。以上の検討により、新たな生体適応メカニズムの解明を推進していく。
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Causes of Carryover |
当該年度において、本研究内容の一部を論文化することを計画していたものの、追加実験および追加の解析に想定していたよりも時間がかかったため、英文校正費や投稿費用として差額が生じてしまった。次年度において、本研究内容の一部を論文化するために英文校正費および論文投稿費用として使用する予定である。
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