2022 Fiscal Year Research-status Report
The Philosophical Research on Totalitarianism in the Olympics
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22K17718
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Research Institution | Edogawa University |
Principal Investigator |
野上 玲子 江戸川大学, 社会学部, 講師 (80825224)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | オリンピック / 全体主義 / ハンナ・アーレント / スポーツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、オリンピックと「大衆」が織り成す全体主義の理論的構造を検討した上で、オリンピック開催に伴う問題の真意を明らかにすることである。この目的を達成するために、2022年度は様々な文献を収集しただけではなく、「オリンピックと全体主義」に関する発表を所属学会主催のオンラインセミナーにて発表し、今後の研究の参考となる多くの意見をいただいた。特に、本研究はドイツの政治哲学者ハンナ・アーレントの全体主義運動を対象として文献研究を行っているが、アーレントがどのような理由から全体主義を批判しているのかを検討するには時間がかかる。多くの著名な哲学研究者から、参考となる本やドイツ語の文献などを紹介していただき、有意義なセミナーとなった。そして、全体主義運動は大衆運動であるとアーレントが指摘するように、「大衆」の存在と定義について議論を深めている。実際にオリンピックと同様の世界大会である女子ラグビーワールドカップ(ニュージーランド)を視察し、世界大会を実施する運営側や市民の動向、つまり「大衆」の動きを観察し、インタビューなどを通じて、ワールドカップが開催地にもたらす影響について検討した。 また、同時期に開催された「第8回世界女性スポーツ会議」(ニュージーランド)にも出席し、オリンピックセッションに参加し、オリンピックが与える女性スポーツへの影響についてさまざまな知見を得ることができた。特に、オリンピックの女性参加率が増えていく一方で、差別やジェンダーの問題も浮き彫りとなることから、引き続き、オリンピックの支配構造についても検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、おおむね順調に進展している。現在、本研究の参考図書となる『ベルリン・オリンピック1936-ナチの競技』(David Clay Large,2008)と、『ベルリン・オリンピック反対運動』(青山,2020)などの著書を丁寧に購読し、ベルリン大会の画一的な統合をはかる全体主義の様子を考察している。考察した内容に関しては、本年度の学会大会にて発表するため、その原稿を今執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の活動をもとに、2023年度は引き続き、国内外の全体主義研究の定式化に取り組む諸研究を対象として、その背景にある規範理論と価値を抽出し、その意義と問題点を明らかにする。特に、本研究はアーレントの全体主義運動を対象として文献研究を行うため、アーレントがどのような理由から全体主義を批判しているのかを検討する。そして、1936年に開催されたベルリン大会の様相を対象とし、例示されている多様な事例をその特徴と性質に応じて分類しながら、オリンピックを先導するヒトラーと「大衆」が織り成す全体主義の理論的構造を検討する。 上記の検討事項は、学会にて研究発表し、本年度中に学会誌へ投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は海外渡航費などの旅費の支出もあったが、国内の研究会や学会等は一部オンラインによる開催であったため、旅費がかからなかった。次年度は、対面開催による学会等がほとんどであるため、その旅費に充てる予定である。
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