2022 Fiscal Year Research-status Report
身体運動や加齢に対する深筋膜の変化とその機序の解明
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22K17722
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
大塚 俊 愛知医科大学, 医学部, 助教 (00879504)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 深筋膜 / 可塑性 / 加齢 / 身体運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動や加齢など、身体の変化に対する深筋膜の適応の程度を調査することが本研究の目的である。若年者から高齢者まで、年齢や運動習慣が異なる男女の下肢深筋膜の厚さを、Bモード超音波法を用いて横断的に測定する。 また、直下の筋の厚さや筋力などの運動パフォーマンスを測定する。この横断的研究により、加齢や運動習慣に伴う深筋膜の厚さ変化が顕著な部位とその程度を調査し、直下の筋との関係に迫ることを狙う。 本年度は、若年者から高齢者まで、計48名の測定を行った。深筋膜は、加齢によって厚くなる傾向が示されてきた。一方で、若年者に見られた筋膜厚と筋厚や筋力との高い正相関が、高齢者ではみられなくなっている。これは、若年時の筋膜の肥厚と、加齢による筋膜の肥厚が異なるメカニズムで生じている可能性を示している。今後も計測を継続して実施する予定である。 上記の結果を受けて、深筋膜の厚さが加齢や運動によって変化する機序の解明が必須であると考えた。そのため、本年度はオハイオ州立大学にて、マウスを用いた下肢の不活動モデルや、運動モデルの作成に携わった。また、マウスおよびラットの深筋膜の肥厚を評価する組織染色方法を確立した。来年度は、これらの方法を用いて、深筋膜の肥厚状態の精査や、肥厚に関連する遺伝子の調査を行う予定である。 加齢によって生じる運動能力や柔軟性の低下の一端を深筋膜の形態変化が担っているとすれば、その構造や機能の変化の有無や原因を探ることは必須であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年と同様、新型コロナウィルスの被害拡大によって、実験施設が長期間休館を余儀なくされ、被験者の募集や測定の実施が困難であった。その中で48名の若年者、高齢者の測定を行い、深筋膜が、加齢によって厚くなることを発見した。一方で、若年者に見られた筋膜厚と筋厚や筋力との高い正相関が、高齢者ではみられなかったことから、若年時の筋膜の肥厚と、加齢による筋膜の肥厚が異なるメカニズムで生じている可能性が示された。次年度も生体の測定は継続して実施して行い、20代から80代まで、年代ごとに深筋膜の厚さの分布を観察する予定である。 被験者募集が滞り、生体の測定のペースが落ちることが予想されたため、急遽研究計画を変更し、深筋膜の肥厚の原因を解明するための研究を開始した。動物を用いた実験手技を習得するため、アメリカ合衆国のオハイオ州立大学に出張した。この出張により、下肢の不動化モデルや、トレッドミルを用いた運動モデル作成に携わるとともに、深筋膜の肥厚を可視化するための組織染色や遺伝子解析方法も習得することができた。次年度は実際にマウスを用いて不動化、運動モデルを作成し、深筋膜の肥厚のメカニズムを調査する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
人間生体を対象とした深筋膜の厚さや筋厚、筋力の測定を継続して実施する予定である。同時に、動物を用いた不動化モデル、運動モデルをそれぞれ作成し、深筋膜の形態変化や、それに関係する遺伝子の動態を観察する。 これにより、どのような年代のどのような運動習慣の人が厚い深筋膜を有するのか、深筋膜の肥厚はどのようにして生じるのか、を解明していく。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス蔓延のため、人を対象とした研究を中止した期間があった。そのため、謝金にあてるための費用を一部削減した。わずかな額であるため、次年度の謝金として使用する予定である。
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