2023 Fiscal Year Research-status Report
スポーツカウンセリングにおいて身体を語ることの効果機序
Project/Area Number |
22K17736
|
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
秋葉 茂季 国士舘大学, 体育学部, 准教授 (30708300)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 臨床スポーツ心理学 / 体験的身体 / スポーツカウンセリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究課題において下位課題として定めた「一般臨床における身体症状とアスリートの体験的身体の相違」についてthe 28th Annual Congress of the European College of Sport Science in ParisにてClassification of Somatic Body Narratives in Athletesというタイトルで研究発表を実施した。ここでは、スポーツカウンセリングにおける体験的身体の語りについて収集し、心理力動的視点から分析を行い、意味の違いから分類を試みた。その結果、1) 意識が身体を動かそうと働きかけ、身体がそれに従わないという体験に関する訴え、2)体が主導権を握っているかのように動き、心が傍観している状態を体験、心とは無関係であるかのように扱われる身体的な体の症状の経験に分類されることを明らかとした。一般の心理臨床で取り上げられる身体の問題とは異なり、自我(意識水準)の身体への働きかけが強いことが特徴として見出された。さらには、もう一つの下位課題として定めた「アスリートにおける体験的身体と言語化の関係」について、第10回臨床スポーツ心理学研究会(じゅうろくプラザ岐阜)にて、「動作のうまくいかなさとともに歩み続けるアスリートの競技人生」というタイトルで事例発表を行った。実際のスポーツカウンセリングの事例から体験的身体が言語化されるということの構造について検討を実施し、関連領域の有識者から意見をいただいた。体験的身体は言語化される前までは無意識領域の意味を多くない内包したものであるが言語化された時点では、それがより狭義になる一方で、言語化する作業では意識化されるため、自我が自己からのメッセージを受け取る機会ともなることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の進捗状況は概ね良好であると言える。まず、当初の計画では、昨年度までに下位課題の一つ目である「一般臨床における身体症状とアスリートの体験的身体の相違」についてデータの収集と検討を終え、本年度で研究発表を行うことを目指していたが、研究実績で示した通り、the 28th Annual Congress of the European College of Sport Science in ParisにてClassification of Somatic Body Narratives in Athletesを発表することができたことから、計画通り進めることができていると言える。さらに、国際学会で発表できたことにより、国外の有識者からコメントをもらえたことは当初の計画以上の成果であったと言える。さらに本年度で下位課題のもう一つである「アスリートにおける体験的身体と言語化の関係」について、事例データを多く収集すること、そしてそれをまとめることを目指していた。これについては10事例を目指していたところそれを上回る13事例を収集することができている。しかし、まだデータ数が多かったこともあり、分析が済んでいないことは当初の計画の通りに進んでいない点である。一方で、1事例であったが途中経過として第10回臨床スポーツ心理学研究会(じゅうろくプラザ岐阜)にて事例発表できたことにより、有識者よりコメントを収集できたことは研究を進める上で有意義な機会となった。研究会では、有識者から研究をまとめる観点について指摘が受けることができ、今後の方向性が明確にすることができた。 これらのことからも、現状ではほぼ研究計画通りに進めることができていると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在収集されている事例データについての分析を進めることを最優先の作業課題とする。また、臨床スポーツ心理学研究会にて指摘にあった国外の関連研究課題について、2024年度に開催されるFEPSAC Congress 2024:European Congress of Sport and Exercise Psychologyにて発表される予定であることから、この学会大会に参加し最終年度研究をまとめることの手がかりを得たいと考えている。 次年度が最終年度となるため、8月までにデータの分析と関連研究の情報取集を終え、9月以降まとめ、その後研究論文として投稿することを目指す。
|
Causes of Carryover |
本年度概ね予定通り使用できた。一部書籍において購入できない図書があったことや為替レートの関係で国際学会に関連する予算において金額に変動があったことからわずかな差額が生じた。研究動向には問題はなく滞り等があったわけではない。
|