2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of motor learning support system adjusting the amount of practice based on the physical condition
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22K17756
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
武見 充晃 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特任講師 (90828302)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 身体運動 / パフォーマンス / 報酬 / あがり / 筋の共収縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、身体運動中の心身の状態変化を監視し、異常を検知した場合には、練習を中断したり、運動方針を変更することを提案することで、心身に負担をかけずに運動技能の習得や発揮をできるよう支援するシステムの確立である。 運動技能の習得過程においては、疲労を感じたら練習を止めるといったように、身体の状態を自己判断して練習量を調節する。しかし、主観的な疲労感と実際に身体に生じている状態変化は一致しないことも多いため、しばしば過剰な練習を招いてしまう。あるいは、心理的なプレッシャーのかかる状況においては、運動をする際に不必要に力んでしまうことがある。過剰な練習や過剰な力みは、運動技能の習得や発揮を阻害するだけでなく、脳や筋の障害を招きかねない。 研究1年目の2022年度は、運動による疲労と、運動のパフォーマンスに影響する心理的プレッシャー、それぞれの状態を反映するバイオマーカーの調査研究を実施した。前者の疲労研究は、学習前に強く筋疲労させた被験者と、非疲労状態の被験者の間で学習様態の違いを比べ、その学習様態と関連するバイオマーカーを多面的に評価した。しかし、疲労の感受性には個人差が大きいためか、画一的なバイオマーカーを見出すことができなかった。後者の心理的プレッシャーに関しては、被験者に「あがり」状態を誘導することを目的に極端な高報酬が与えられる運動条件を設定して、通常の報酬量での運動時と比べて、筋活動がどのように異なるのかを評価した。その結果、高報酬条件でパフォーマンスの低下を示した被験者は、運動開始前の上腕二頭筋と三頭筋の共収縮が強く、これが心身の状態変化を反映するバイオマーカーの候補となることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究の目標は、運動による疲労と、運動のパフォーマンスに影響する心理的プレッシャーがそれぞれ反映するバイオマーカーを明らかにすることであった。 前者の疲労研究に関しては、想定通りの結果を得ることができず、進捗が遅れている。研究では、学習前に強く筋疲労させた被験者と、非疲労状態の被験者の間で学習様態の違いを比較し、その学習様態と関連するバイオマーカーを多面的に評価した。しかし、疲労の感受性には個人差が大きいため、一般的なバイオマーカーを見出すことができなかった。 後者の、運動パフォーマンスに影響するバイオマーカーの探索に関しては、期待以上の結果を得ることができた。被験者に「あがり」状態を誘導することを目的に、極端な高報酬が与えられる運動条件を設定し、通常の報酬量での運動時と比較して、筋活動がどのように異なるのかを評価した。その結果、高報酬条件でパフォーマンスが低下した被験者は、運動開始前の上腕二頭筋と三頭筋の共収縮が強く、これが心身の状態変化を反映するバイオマーカーの候補となることが示された。さらに、同様の結果は別の被験者を対象に独立して実施された別の実験でも確認された。屈筋と伸筋の共収縮が、運動パフォーマンス低下の予兆を反映するバイオマーカーとなる、強いエビデンスが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、開発したバイオマーカーを用いた運動支援システムの効果を検証し、運動技能の習得や発揮が効率化されるかを調べる。現時点で、運動学習に影響する疲労状態を反映するバイオマーカーはまだ見つかっていないが、運動パフォーマンスに影響する心理的プレッシャーを反映するバイオマーカーは見つかっている。 そこで2023年度は、心理的プレッシャーを反映するバイオマーカーを用いて、運動開始前の屈筋と伸筋の共収縮を被験者にフィードバックすることで、高報酬条件下での運動パフォーマンスの低下を抑制できるかどうかを検証する。疲労状態に関しては、引き続きバイオマーカーの探索に取り組むが、残り1年の限られた時間の中で、当初の目的を達成するため、研究資源は前者の運動パフォーマンス支援システムの有用性検証に集中する。
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Causes of Carryover |
約48万円の次年度使用額の内訳は、旅費が約38万円、人件費が約10万円である。いずれもコロナ感染症の影響で、出張や実験が当初予定通りほど実施されなかったために生じた繰越である。2023年度は、大学における出張や実験制限が撤廃されたため、前年度実施できなかった出張や実験を精力的に進める。 なお費目別に見ると、物品費は当初予定額を60万円上回っての支出、旅費・人件費・その他は当初予定額を下回っての支出となっている。物品費の上振れ分60万円のうち、30万円分は「その他」、30万円分は「人件費」からの費目間流用である。「その他」分は、「その他」計上していた実験システム製作の業務委託を、ハードウェアを物品費で購入してシステムを自作することとしたために流用した。「人件費」分は研究支援スタッフの雇用資金として確保していたが、間接経費にて賄えることとなったため、やはり実験システムの製作に必要なハードウェアの購入資金とした。
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Research Products
(1 results)