2023 Fiscal Year Research-status Report
単一細胞オミクスを用いる老化に伴う骨格筋再生機能低下メカニズムの解明
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22K17802
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑門 温子 (宮脇温子) 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD) (60843836)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 数理モデル / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、数理モデルを構築することにより、老化による再生能力低下の原因となる因子を同定するとともに、その制御メカニズムを解明する。本年度は、前年度に引き続いて遺伝子発現データの網羅的解析を行うとともに、本研究の根幹となる環境要因に対する遺伝子発現応答の数理モデルの構築を試みた。まず、ソメイヨシノの芽の約一年を通した遺伝子発現プロファイルを解析することにより、サンプルを5つのクラスターに分類し、各クラスターを特徴づける遺伝子の機能解析を行った。また、これらのクラスター間の遺伝子発現の差異は、環境要因である気温によって説明できることを統計的手法により明らかにした。この結果を元に、エピゲノムレベルの環境応答が示唆される、休眠打破に関与するDORMANCY-ASSOCIATED MADS-box遺伝子の発現変動に着目し、それらの発現変動および気温の変化に基づく数理モデルを構築した。このとき、キー遺伝子の発現変動と休眠打破実験の結果をロジスティック回帰により評価することで、その発現変動と気温の変化に着目すれば、ソメイヨシノの休眠打破が生じる時期を予測できる可能性が示唆された。また、このキー遺伝子の発現レベルが休眠打破の生じる閾値以下まで抑制されるのに要する、野外環境下での温度条件とその日数が求められた。 上記の研究成果は、国内で開催された国際学会においてポスター発表を、国内の学会において口頭発表を行った。今後は、本年度に構築した数理モデルを応用し、環境要因を考慮した遺伝子発現に基づく再生モデルの構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、前年度に引き続きトランスクリプトームデータの網羅的な解析を行うとともに、その結果に基づいた数理モデルの構築を計画とした。この数理モデルによれば、野外環境下で休眠打破が生じるための環境条件が求められるとともに、休眠打破が生じる時期を予測できる可能性が示唆された。この結果は、遺伝子発現が休眠打破のタイミングを予測するための重要な指標となり得ることを示している。しかし、当初の研究計画に変更が生じたためやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に構築した数理モデルを応用し、環境要因を考慮した遺伝子発現に基づく再生モデルの構築を目指す。このとき、温度などの環境要因が再生機能低下にもたらす影響を予測する。数理モデルのパラメーター決定のため、必要に応じて実験データを追加取得する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は主にデータ解析と基盤となる数理モデルの構築を行ったため、使用額を抑えることができた。次年度は、目的である数理モデルのパラメーターの推定のため、より多くのデータが必要不可欠になることが想定される。物品費として、主にPCRや次世代シーケンサー等の必要な試薬を計上している。旅費として、学会発表を予定している。その他、論文投稿料等を計上している。
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