2022 Fiscal Year Research-status Report
D型アミノ酸によるタンパク質代謝制御機構の分子基盤と生理作用の解析
Project/Area Number |
22K17816
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
矢野 敏史 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (60936615)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / 発酵食品 / オートファジー / 腸細胞 / タンパク質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、D-アミノ酸の腸細胞にたいするオートファジーの制御機構について解析し、タンパク質代謝に及ぼすD-アミノ酸の生理機能を分子レベルで理解することを目的としている。本年度は、D-アミノ酸のオートファジーへの影響を腸細胞にてスクリーニング解析し、オートファジーを活性化するD-アミノ酸を数種同定した。これらD-アミノ酸のオートファジーは豊富なL-アミノ酸の存在下でも誘導されたことから、栄養因子であるL-アミノ酸の欠乏がもたらすオートファジーの亢進とは異なり、D-アミノ酸では非栄養因子としてオートファジー調節機能を有することが示唆された。近年、微生物の発酵作用を利用した醸造物にもD-アミノ酸が豊富に存在することが報告されている。そこで、発酵食品に着目し、食事由来のD-アミノ酸を含めた成分が腸細胞のオートファジーに与える影響をスクリーニング解析した結果、単体のD-アミノ酸よりも強いオートファジー活性化作用を有する発酵食品を数種類見出した。発酵食品の有するD-アミノ酸や共存する成分の含有比がオートファジー調節に機能することが示唆されたことから、含有成分の分析を進めている。また、これらD-アミノ酸のオートファジー活性化作用は、一般的な栄養飢餓シグナルとは異なるメカニズムを介することが示唆されたことから、オートファジー制御に作動するD-アミノ酸のセンシング機構の存在を想定している。そこで現在、D-アミノ酸の作用解析として、細胞内シグナルを標的としたトランスクリプトーム解析を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、腸細胞のオートファジーを活性化するD-アミノ酸を数種類同定できており、それらD-アミノ酸を豊富に含有する発酵食品などが強くオートファジーを活性化することを見出すことができた。また、L-アミノ酸による栄養シグナルとは異なるD-アミノ酸のオートファジーの制御機構の存在を確認するまでに研究が進捗した。今後、標的となる作用シグナルの解析によって詳細なメカニズムを明らかにする予定であり、本研究課題は計画の通りにおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究を推進する予定である。 1.トランスクリプトームの解析などにより、D-アミノ酸のオートファジーを制御する細胞内シグナルへの作用や生理機能について検証する。 2.オートファジー調節に寄与するD-アミノ酸を含めた共存成分について、オートファジー活性化作用が見られた発酵食品の成分分析を行うことで検証する。
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Research Products
(12 results)