2022 Fiscal Year Research-status Report
レプチンの甘味感受性抑制機能を介したエストロゲンの摂食調節作用
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22K17841
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
中木 直子 京都光華女子大学, 健康科学部, 講師 (40804183)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エストロゲン / レプチン / 食欲 / 食嗜好 / 甘味感受性 / 摂食ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
女性では、初経・月経周期・閉経などによる血中女性ホルモン濃度の変動に伴い、体重の増減や摂食量の変化がみられる。本研究では、エストロゲンの摂食抑制・肥満予防作用のメカニズム解明のため、レプチンの甘味感受性を介した作用に着目した。エストロゲンが舌の味細胞にあるレプチン受容体の発現に影響を与え、エネルギー源である甘味の感受性を抑制することで、その摂取量を調節するという仮説を、ヒトと動物を対象とした実験にて検証するものである。 2022年度は、健康な女子大学生を対象に甘味閾値や甘味嗜好性を調べる実験を行う予定であったが、新型コロナウィルスの影響もあり、計画通りに被験者と実験環境を確保することが難しかった。そのためまずはアンケート調査を行い、Food Craving Inventory for Japanese (FCI-J) (Komatsu, Appetite, 2008) を用いて食べ物への渇望(特定の食べ物に対して我慢できないくらい強い欲求と定義)を評価したところ、月経中と比較して月経前に食欲増進を訴える者が多く、とりわけチョコレートやアイスクリームといった甘い食べ物への欲求が高まっていることを明らかにした。また、女性ホルモン濃度の異なる月経期・排卵前期・黄体中期に採取した血漿レプチン濃度の比較では、月経期と比較して排卵前期に有意に高値を示した。このことから、女性ホルモン濃度の変化が血漿レプチン濃度に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請当初は、若年女性の口腔内甘味感受性を介した甘味嗜好性・糖質摂取量の変化を2022年度から2023年度にかけて実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響により実験環境の確保と被験者を増やすことができず、アンケート調査と血漿試料の分析にとどまった。一方、分析には至っていないが卵巣摘出ラットの臓器サンプルの収集を行うことができた。以上のことから「(3)やや遅れている。」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時に予定していた通り、月経周期により変動する女性ホルモン、特にエストロゲンがエネルギー源のひとつである甘味に対する口腔内感受性を変化させ、甘味嗜好性や摂取量に影響を与える可能性を明らかにし、そのメカニズムにおけるレプチンの関与について検討する予定である。 健康な女子大学生を被験者として募り、エストロゲンとプロゲステロンの血中濃度が異なる月経期・排卵期・黄体期の3期のうちのいずれも1日、計3日間とし、実験には以下の項目を実施する。 (1)口腔内甘味閾値・甘味嗜好性;スクロース濃度を変えた5種のサンプル(0.09~1.05 M)とコントロールサンプルを用い、全口腔法にて3肢強制選択法(他の2つと味が異なる1つを選択する方法)によるスクロースの検知閾値を測定し、感受性を評価する。続いて、5種類の濃度でスクロースを添加したジュースによる甘味ランキング実験を行い、嗜好性を評価する。さらに、引き続きFood Craving Inventory for Japanese (FCI-J) (Komatsu, Appetite, 2008) を用いて、特定の食べ物への渇望を評価する。加えて、実験日前後2日間、秤量法による食事調査を実施し、実際の糖質等の摂取量を評価する。 (2)血中ホルモン濃度;各実験日の安静時に採取した血液から、エストラジオール、プロゲステロン、レプチン、グルコース濃度を測定する。また、インスリン、グルカゴン様ペプチド-1などの血糖調節ホルモン濃度も測定する。
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Causes of Carryover |
2022年度実験・調査で使用した試薬等は、所属大学の個人研究費等別の予算で購入することができたことと、若年女性を対象とした研究の被験者が予定通り集まらなかったため、予算に余裕が生じ、次年度への繰り越しが可能となった。繰り越し分を次年度予算の物品費(試薬代など)やその他(英文校正費、論文投稿費)に繰り入れることにより、本研究課題の効果的な推進を計画している。
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Research Products
(1 results)