2023 Fiscal Year Research-status Report
多数デバイスへ同時給電可能な,電磁理論的に安全かつ高効率なユビキタス無線給電技術
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22K17867
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白井 僚 京都大学, 情報学研究科, 助教 (70910834)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 無線給電 / 磁界結合 / 電流チョッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度に引き続き,送電コイルと受電コイル間の結合係数が極小時に高効率無線給電を実現する手法について検討を進めた.多数のデバイスに同時給電することを必要とするアプリケーションとして,道路中のコンクリートに埋め込んだ多数の劣化診断用センサに対して無線給電を行う構想の実現に向けて研究を実施した.想定したアプリケーションでは,直径60cmの大型コイルから,道路中に埋め込まれた30mm角の大きさのセンサに対して最大距離30cm程度で無線給電を行う必要がある.本条件では結合係数は0.004以下となる.前年度提案した受電コイルに流れる電流をスイッチングする手法を用いた場合,46.2mWの給電が可能であることがシミュレーションにより明らかになった.従来の無線給電手法を利用した場合,受電可能電力は38.3mWであったことから,提案手法により,受電電力が約20%向上することが明らかになった.提案手法はコイルに流れる電流をスイッチングすることから,スイッチングする機構そのものが電力を消費するという特徴がある.したがって,センサデバイスが自身に蓄えられたエネルギーを使い果たした場合,スイッチングが行えなくなり,電力の受電ができなくなる.そこで本研究は,スイッチングを行えない際には自動的に従来の無線給電回路へと切り替わる回路構造を提案した.これにより,デバイスがエネルギー切れの場合は,スイッチング制御を行う回路が起動可能になるまで低効率で無線給電を行い,スイッチング制御回路が起動後は,自動的に高効率無線給電を行うことが可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始後に,1対多の無線給電においては,送電コイルと受電コイル間の磁界結合が,従来の無線給電システムに比べ著しく小さいことが明らかになった.そのため,従来の構造では必要十分な電力伝送ができないという課題を発見した.そこで昨年度は研究計画を変更し,特に,結合係数が極小時に無線給電を行うことを可能にする回路構造の提案に取り組んだ.本年度は昨年度に引き続き,送受電コイル間の結合係数が極小時に無線給電が可能な手法を改良するとともに,当該手法を1対多の無線給電システムに適用することを目標としていた.一方で提案手法はデバイスがエネルギーを使い果たした際には利用できないという課題を抱えており,当該課題を解決するために新しい回路構造の提案が必要となった.デバイス内部のエネルギーが枯渇した際に動作可能な回路構造の提案には成功したものの,長期間を要してしまったため,当初の1対多の無線給電システムの評価に着手できていない.そのため,当初の研究計画に対して,現時点ではやや遅れていると判断する. 一方,昨年度と本年度の研究により,結合係数が極小時に無線給電を行えることが明らかになったため,次年度は比較的早期から,1対多の無線給電システムの実装と評価に取り掛かれるものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と本年度の研究成果である,結合係数が極小時に無線給電が可能な回路構造を1対多の無線給電システムに適用し,性能を評価する.具体的に,本研究課題の開始後に設定したアプリケーションである,道路中に埋め込んだ多数の劣化診断用小体積センサに対して,必要十分な無線給電が可能か検討する.本項目の実施にあたっては,土木系研究者と協同して実際に鉄筋コンクリートを打設し,当該コンクリート内にセンサデバイスを埋め込むことを検討している.実際のアプリケーションを想定した実験を行うことで,本研究成果の有用性と有効性を評価する. 同時に,磁界式無線給電で課題となる,金属異物の発熱に対しても検討を進める.具体的に,無線給電磁界中に設置された微小な金属異物が回路的にどのようなふるまいをするのか,シミュレーションと理論検討を通して明らかにする.その後,安全な無線給電システムの実現に向けて,金属異物を低コストで検知可能な回路構造を実現することを目指す.
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Causes of Carryover |
研究実施過程で生じた課題である,デバイスがエネルギーを使い果たした際に,コイルを流れる電流のスイッチングができなくなり,結果として無線給電が不可能になるという課題の解決に想定以上の期間を要したため,当初予定していた国際学会への参加が困難となった.そのため,次年度使用額が生じている. 本年度の研究過程で明らかになった新しい課題は解決されたため,残余金は次年度の国際学会の参加費と旅費に充てる予定である.
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