2022 Fiscal Year Research-status Report
Traffic Control Schemes in Decentralized In-Network Computing toward Democratization of Network Service Platform
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22K17888
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
速水 祐作 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワーク研究所, 研究員 (00868820)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 情報指向ネットワーク / トラヒック制御 / ネットワーク内処理 / ネットワークサービスプラットフォーム / ブロックチェーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分散環境に親和性の高い情報指向ネットワーク (ICN) と、分散型という共通項を持つ ブロックチェーン技術を融合させ、全く新たな分散型ネットワークサービス提供基盤の形成を目指す。具体的には、ICN 網内処理を実現するためのシステム基盤の土台を構築するため、A) データ処理機能を発見する経路制御を提案し、B) 発見した機能の負荷状態を考慮したトラヒック分散転送制御による拡張を行う。 今年度(2022年度)は、まず上記両課題を推進するために必要なICN実験用ソフトウェアの開発に注力した。エッジコンピューティング環境で広く利用されているマイクロサービス技術であるDockerコンテナを利用したICNルータ機能を開発し、著名国際会議のチュートリアル等において成果発表を行なった。その後、予備的な試験としてICNルータ機能を集中管理するためのフレームワークを開発して性能評価を実施した。本提案によりICN機能やアプリケーションが既存インターネットインフラ上に効率的、かつ迅速に展開可能なことを示した。本成果はIEEE INFOCOMの併催ワークショップにおいて発表予定である。将来的には、集中管理部を分散管理機能としてブロックチェーン技術に置き換えるような形で、ICN機能とブロックチェーン基盤との統合を目指す。 これらと並行して、ICNやSDN/NFV に関する著名国際会議の論文を読みつつ上記両課題の方式検討を進め、課題A)に関して経路制御アルゴリズムを提案し、シミュレーション実験による成果を、国内著名学会の英文論文誌に投稿した。課題B)についても、著名国際会議の技術論文のサーベイを行い、処理機能の計算資源の状態を考慮してトラヒックの負荷分散を行う手法を提案し、初期設計を実施している。次年度(2023年度)は実装と評価を行い、得られた成果をまとめて国際会議に論文を投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度(2022年度)は、以下の5つの課題に取り組み、それらが多くの研究成果に結実したという点で、計画以上に進展した。 ① クラウド・エッジコンピューティング環境においてよく利用されるDocker技術を応用してICN実験用のソフトウェアを開発し、ICN機能をインターネット上に容易にデプロイするためのフレームワークを構築した。本成果はICN関連のトップカンファレンスであるACM ICNや APNOMSにおいてチュートリアル講演を実施した。 ②上記①で開発したフレームワークを活用し、PoCとして集中制御管理下でのICN機能を用いた動画配信アプリケーションの予備実験を行い、提案するフレームワークの利用によりユーザ体感品質が大きく向上することを確認した。本成果をまとめた論文がIEEE 系のトップカンファレンスINFOCOM のクラウドコンピューティング関連のワークショップに採択された。 ③ネットワーク内処理の観点では遅延時間・通信効率が非常に重要になってくることから、ネットワーク内処理のためのトランスポート技術を新たに提案・開発・実装を行い、得られた評価結果をまとめた論文がIEEEの著名国際会議であるCCNC’23に採択された。本技術は①のフレームワーク上で動作するため、アプリケーション品質を支える基盤技術として、経路制御やトラヒック制御と組み合わせた使用を想定している。 ④ICN評価シミュレータを用いたシミュレーション評価により、提案するデータ処理機能を発見する経路制御の基礎評価と数学的な解析を行い、得られた成果をIEICEの英文論文誌に投稿した。 ⑤発見した機能の負荷状態を考慮したトラヒック分散転送制御の初期方式検討を行い、現在シミュレーション評価環境への実装中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(2022年度)の取り組み内容に基づいて、次年度(2023年度)は以下の課題を実施する。 i)シミュレーション評価により得られた知見に基づき、ネットワーク内データ処理機能を発見するための経路制御を実装し、性能評価を行う。具体的には、2022年度の成果であるICN機能を提供するフレームワーク上に提案する経路制御機能を拡張して組み込み、複数の計算資源を利用するための経路をユーザに提供する環境を構築する。 ii)上記i)の経路制御により提供される経路をネットワーク資源として利用し、処理機能の負荷状態を考慮したトラヒック制御を、同様にICN機能を提供するフレームワーク上に実装する。具体的にはデータ処理機能の状態(CPU利用率など)に応じて負荷状況を判断し、計算資源に空きが多い機能を時間軸・空間軸で効率的に利用するための方式を実装する。実機環境において、並行して実施するシミュレーション評価からの知見を相互的にフィードバックさせ、詳細な性能評価を行う。 iii)研究計画調書ではブロックチェーン部分に関する検討は将来課題で研究の対象外としたが、現在までの進捗状況が当初の計画以上に進展していることを鑑み、本年度にブロックチェーン実装に関する先行調査を実施した。次年度は、これらの調査を継続して行い、スケーラビリティや導入可能性・容易性の観点でソフトウェアライブラリが豊富な既存ブロックチェーン技術であるHyperledger FabricやEthereumなどのプラットフォームとの連携可能性を検証する。これにより、提案する経路制御とトラヒック制御が相互に連携して動作する環境において、ICNにおけるネットワーク制御とブロックチェーン技術が統合的に動作する基盤を構築するための事前準備を行う。
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Causes of Carryover |
物品購入費用に関しては、ラップトップ端末の高機能化と提案するフレームワークの実装の軽量性が相まって、計算資源に対する支出は最低限に留められた。また、旅費に関しては、発表する国際会議が日本国内の会議・ハイブリッド開催のものが多く渡航費(ホテル代・航空券代など)を大幅に抑えられた点、円安の影響をあまり受けなかった点が挙げられる。また、新型コロナウイルスによる海外の渡航制限が緩和され、先に述べた円安と米国でのインフレ状況を鑑み、既に論文が採択されて出張が確定している2023年度の米国主張分の渡航費用に充当するため繰越したという経緯がある。翌年度請求した助成金と合わせ、国際会議での成果発表や論文誌での誌面発表にて使用させていただく予定である。
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