2022 Fiscal Year Research-status Report
生体電位を用いたウェアラブルデバイス向け動作認証方式の開発
Project/Area Number |
22K17890
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
飯島 涼 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (40936051)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生体信号 / 認証技術 / プライバシー / 信号処理 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
「ウェアラブルデバイス上に搭載された生体センサを用いて,個人認証を行う技術の開発」を目的とした研究を実施中である.従来の認証に残されているセキュリティ問題・ユーザビリティ問題を解決するため,人の動作によって生じた生体電位から,個人ごとに生じる特徴を抽出し,認証に利用する.まばたき・ウィンクなど,他の動作と同時に行える動作に着目し,(1) 早く,(2) 単純で,(3) 誰でも利用可能な動作認証システムを開発する. 2022年度の研究では,「眼電位を用いたウェアラブルデバイス向け認証技術の開発」を実施し,国内会議[コンピュータセキュリティシンポジウム2022]に投稿・優秀論文賞を受賞した.国内会議に投稿した内容を修正し,国際会議に投稿中である.また,スマートウォッチに搭載可能な筋電センサを用いて,1chの安価な認証技術を開発し,2023年3月の[ICSS研究会2023年3月]に投稿した.筋電センサによる認証技術の開発についても,同様に実験項目を増やし,国際会議投稿に向けて準備を進めている. これらのシステムの開発により,従来の顔認証・音声認証と比べてより頑健なセキュリティ認証技術を確立するとともに,体が動かせない人,運転中・料理中など他の動作中で手が離せない人,声が出せない人など,あらゆる人が動作認証を利用できる世界の実現を目指す.ユーザビリティの確保された認証技術の普及のためには,ユーザが意図せず無意識に認証が行える状態を作ることが最優先である.これらの開発した技術が,継続認証として利用できるような技術開発,並びに,実現した場合のセキュリティ・プライバシー対策を考慮した研究を今後も推進する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究では,「眼電位を用いたウェアラブルデバイス向け認証技術の開発」を実施し,国内会議[コンピュータセキュリティシンポジウム2022]に投稿し,国際会議投稿前の草稿とした.(「まばたきによって生じる電圧を用いた認証方式の提案」) 本研究は,一般社団法人 情報処理学会 コンピュータセキュリティ研究会(CSEC)の審査により,優秀論文賞を受賞している(全発表中9件).国内会議に投稿した内容を修正し,国際会議に投稿しているが,採録に至っておらず,修正・再投稿を行っている段階である. また,スマートウォッチに搭載可能な1chの筋電センサを用いて,安価な認証技術を開発し,2023年3月の[ICSS研究会2023年3月]に投稿した.本研究では,従来の生体認証では高精度にデータ計測を行うために使われてきた医療機器・医療センサを用いず,1chの市販センサを利用し,最新の深層学習技術により,医療センサと同等の精度を達成できている.筋電センサによる認証技術の開発についても,ユーザビリティ評価,安定性評価など,眼電位による認証と同様に実験項目を増やし,国際会議投稿に向けて準備を進めている.今年度中に筋電位認証についても国際会議投稿を行い,次の研究テーマに移行する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の進捗状況に挙げた論文の国際会議投稿・ジャーナル投稿を目指しつつ,今後はこれらの認証や,ヘルスケア利用が行われるうえで,生じうるセキュリティ・プライバシー脅威を明らかにし,脅威が顕在化する前にその傾向や生じる条件を調査することを考えている.取り上げたセキュリティ・プライバシー脅威のうち,深刻度が高いもの・重要性が高いものについては,対策手法を考案し,脅威の調査結果と合わせて論文化することを考えている. 生体電位に生じるセキュリティ脅威として,ユーザの生体信号を複製・合成することによるSpoofing攻撃や,生体信号の計測を妨害するDenial of Service攻撃が考えられる.これらの対策手法は,音声による認証攻撃の対策を参照し,Presentation Attack Deteciton, Liveness Detectionなど,本物の人間であることを確認できる手段を使い,対策を行うことを考えている.これらの対策手法が有効であるかを音声・画像の場合と比較して検証することで対策手法の有効性を示すことができる. プライバシー脅威としては,ウェアラブルデバイスの普及によって,ユーザ固有の生体信号の特徴が漏洩するリスクがより高くなることが考えられる.このリスクへの対策として,生体電位以外のデジタル情報では,差分プライバシー技術などのプライバシー保護技術が適用されている.生体信号の場合は,アナログ信号であるため,プライバシー保護をする場合には,従来の差分プライバシー技術をデジタルデータだけでなくアナログ信号にも適用できるようにする必要がある.従来の差分プライバシー技術について調査した後,アナログ信号波形について適用する場合に必要な技術を開発し,アナログ信号向けのプライバシー保護技術の開発について検討する.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の特例を利用して科研費を半年遅れて取得したため,3300000円分の研究費で購入する品目を用意できていない状況である.ユーザスタディに利用するセンサ・医療機器周辺のアンプの購入に利用する予定である.ユーザスタディの謝礼金額が予想よりも上回った場合は,3300000円の中から利用する.
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